下剤を飲む頻度が減り、トイレへの不安も減っていった

私の産業医面談では、40歳以上であったり、大腸癌などの家族歴があったり、若くても排便に伴い出血がある人や過去数カ月間での体重減少が見られる人には、消化器内科を受診し大腸内視鏡検査について主治医に相談することを提案しています。

Aさんにその旨をお話ししたところ、大腸内視鏡検査は以前受けたことがあり、出血もないし大腸癌がとても心配とは思わないということで、消化器内科の受診には消極的でした。

ですので、しばらくは「毎日は出なくていい」として様子を見ることとなりました。その結果下剤を飲む頻度が減り、通勤時や業務中に催すことも減り、トイレの不安と恐怖が減り、再び業務に集中できるようになりました。

その後、Aさんは産業医面談には来ていません。今でも気にならない程度にコントロールできていると信じています。

ボール紙で作られた大腸を持つ女性
写真=iStock.com/LightFieldStudios
※写真はイメージです

自律神経の乱れが、大腸の動きの乱れを招く

口から食べたものが便になり排泄されるには大抵24〜72時間かかると言われています。食べたものは、口から小腸までの間に消化や吸収されます。そして、通り道の最後の臓器である大腸で、水分が吸収され“便”となります。

ざっくり言えば大腸には、食べ物の残りから水分を吸収して適度な硬さの便を形成する役割と、便をお尻の方に送り出す役割があります。大腸の動きが鈍ると、つまり便の通過速度が遅くなると、水分が吸収されすぎて便は硬くなり便秘になります。大腸の動きが活発すぎると、つまり便の通過速度が早すぎると、水分の吸収が不十分になり、軟便や下痢になります。

この役割をつかさどるのは自律神経といって、人間が意思ではコントロールできない神経です。繊細な人は、ちょっとした緊張やストレスで、自律神経の働きが崩れてしまい、結果として、大腸で流れが停滞して水分を吸収しすぎる「便秘」や、十分な水分吸収が行われない「下痢」となってしまいます。人によっては、便秘と下痢を交互に繰り返す場合もあります。