私は大学卒業後、アメリカの外資系コンサル会社に就職しました。

その後、そこにある「グローバルに共通な手法」と「日本社会のリアル」との間の齟齬がほったらかしにされている現状を埋める何らかの視座が必要になると切実に感じることがあり、退職後はブラック企業やカルト宗教団体に潜入するなどのフィールドワークを行った上で、現在は中小企業のコンサルティングを仕事にしています。

つまり、冒頭で紹介したような、外資系コンサル会社の「バブル状態」とは距離を置きつつも、一応似た業界の人間として仕事をしています。

オフィスで働くアジアのサラリーマン
写真=iStock.com/kokoroyuki
※写真はイメージです

そうやって、大企業向けのサービスを提供する外資コンサルの顧客にはならないような「日本の中小企業」を見てきた実感から言えば、日本企業の方々が次々と「他人にやらされる宿題」をこなしているだけのように見えます。

それでは会社や事業が良くなっていくことはありません。

「他人にやらされる宿題」をこなしていても成功はできない

日本企業の皆さんが一生懸命取り組んでいる「他人にやらされる宿題」とは何か。私なりに説明すると、他人(ライバル企業など)を追いかける守りの仕事です。

企業を取り巻く環境分析の際に、「3C」(自社・競合・顧客)をバランス良く見ることが大事だ、とよく言われます。しかし、「他人にやらされる宿題」に追われていると、「競合」の事例ばかりに目が行きます。肝心な「自社」「顧客」の深堀りが疎かになる傾向があります。

もちろん成功している事例を取り入れることも重要ですが、自分たちに合った形に作り直し、現場で生起する課題を毎日丁寧に潰して実現できなければ意味はありません。

上層部が散発的に「流行り物」を追いかけ、号令を発してはそのうち立ち消えになり、残るのは現場の人々の疲弊感だけ――。これでは「ダメな日本の組織あるある」のような状況になってしまいます。

成功している中小企業の経営者には「他人に与えられた宿題をこなしているだけではいけない」という感覚は常識といっていいものです。大きな会社でも創業経営者がいるような会社でも同じだという印象を持ちます。

大企業には大企業ならではの事情があるのはわかります。

SDGs、サイバーセキュリティ、地政学リスク、脱炭素、危機対応マネジメント、コンプライアンスなど……大企業なら避けられない他人から与えられる宿題をこなす必要はどうしてもあるでしょう。

しかし、次から次へと言われたことをこなしているだけでは、その会社が良くなっていくはずがありません。「あと3歩ぐらい“自分ごと”に引き寄せる」ような攻めの姿勢が不可欠だと思います。