いまはバラバラに、「日本はもうダメ」と「日本スゴイ」の両極端化した議論の場に放出されてしまっているエネルギーを1カ所に集めて具体的な形に落とし込み、「自分軸の勝ち筋」を見出していく動きを、皆でバックアップしていくことが必要なのだと思います。

そういう「自分ごととして考えられた勝ち筋」のことをコンサル用語で「インサイト(洞察)」と言います。

その「良いインサイト」さえあれば、そこから先は優秀なコンサルタントにリードしてもらうことが急激に有意義なものになるでしょう。コンサル的に優秀な人材には「使われる」のでなく、自分ごとの軸をしっかりと立てて「彼らを使っていく」ことが大事なんです。

これはコンサル業界にいる人からしても、自分たちに丸投げせず主体的に考えてほしいと思っている人は多いはずです。

ビジネスモデルの転換に成功した『鬼滅の刃』の事例

世界的規模の大ヒットとなった『鬼滅の刃』ですが、その背後には非常にオリジナルなビジネスモデルの転換があったことはご存じでしょうか?

日本のアニメはリスク分散のために非常に多くの会社が出資して作られることが多く、それが「船頭多くして船山に登る」的な動きの鈍さに繋がりがちでした。

一方で『鬼滅の刃』は出資関係を整理し、原作を連載していた『週刊少年ジャンプ』の集英社、ソニー子会社のアニプレックス、アニメ制作会社のufotableの3社に限定することで、アニメシリーズ・映画・幅広いコラボグッズの展開にいたるまで、スムーズに統一された意思決定が行える態勢を整えていました。

特に、「テレビ局の出資による支配」から脱したことで自由度の高さを実現させたと指摘されています。既存の関係を無理に「ぶっ壊す」ようなことはせず、むしろテレビ局を非常にうまく使うことで、ブームを急加速させることにも成功しました。

使われるのではなく、使いこなす

私はこの「『鬼滅の刃』のヒットを生み出した仕切り方」に非常に高い可能性を感じています。

なぜなら、それは「昭和時代の延長を惰性で続ける」のではなく、「グローバルな事例をそのまま持ってきて“ぶっ壊す”をやろうとする平成風」でもなく、「グローバルな事例を活かしつつ、自分たちの特性に合ったオリジナルな勝ち筋を見出す“令和のソリューション”」だからです。

日本のコンテンツビジネスは、テレビ局が支配する構造によって色々な硬直性を生んでいるという指摘は古くからなされていました。

かつてIT起業家がテレビ局の買収を何度も試みましたが、今まで実現せずに来ました。「コンテンツを作る現場」という文化的にデリケートな場を、そのまま資本の論理に晒してしまうことへの拒否感があったのではないかと思います。