実際、私は経営コンサル業の傍ら、いわゆる「コーチング」のような形で少額の謝礼をいただきつつ「文通」を通じて今の日本を生きる色んな立場の人と人生を考える仕事をしています。

大企業で働いている文通相手から「他人から与えられた仕事で精一杯」「やらなきゃいけないことをこなしているだけで、その先の展望が開けない」という話をよく聞きます。では、どうすればいいのでしょうか?

「GAFAはこうなのに日本ってダメだよね」と言っていても仕方ない

少なくとも日本の中小企業に関しては、「良く考えられた勝ち筋」を共有することから始める必要があります。他人の事例を追いすぎてもいけないし、自社のことで頭がいっぱいになっていてもいけないのです。

「自分たちだからこそ差別化できる勝ち筋」をしっかり考え、展望を示すことができれば、日本の組織は勝手に自分たちで問題解決に向かって回り始める性質を持っているケースが多いように思います。

いまの日本では、「日本はもうダメ」と「日本はスゴイ」の両極端な意見が目立ちます。コンサルタントとして企業経営を見ても、「他人の事例を追いすぎる言論」と「自分たちの事情に引きこもる言論」の両極端な傾向があります。

とても残念なことは、「自分たちだからこそ差別化できる勝ち筋」を考える機能が沈黙してしまっているのです。

いま必要なのは、「GAFAはこうなのに日本ってダメだよね」という現場無視の嘆き節ではありません。なぜならGAFAの事例は特種な成功例すぎて、多くの日本企業にとって前提が違いすぎるからです。

もちろん、だからといって「中身のない日本スゴい言論」も未来に繋がることはありません。

「“自分たちの場合は”こうやって行けば勝てる」というよく考えられた勝ち筋を、それぞれの業界、それぞれの会社で共有していくことこそが今の日本に必要なのです。

ビジネスミーティング
写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi
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「日本はもうダメ」と「日本スゴイ」の両極端化した弊害

ただ、中小企業と違って大企業レベルになると、そういう「勝ち筋をオリジナルに考える」ような機能を果たせる人がなかなかいません。「現場側の事情も知っていながらグローバルな事情にもアンテナが高い」というハイブリッドな人材が、じっくり時間をかけて結論を出せるような場がない。

そもそも一人や二人の賢い人がいれば結論が出せるようなサイズの課題でもなく、知恵を出し合って考える場が必要ですが、そういう場がなかなかない。