ミクシィを潰そうと思ったことは一度もない

【ひろゆき】ネットサービスの話に戻ると、IT系って似たようなサービスをやっていても、あまりお互いをライバル視しないよね。ふつうビジネスだと、売上を上げるために他社に対して敵対行動をとったりするのに。

【けんすう】それぞれの役割(ロール)の問題もありますよね。お互いの役割の関係で、ケンカはするけど、別に仲が悪いわけではないパターンとか。

【ひろゆき】僕らが2ちゃんねるをやっていて、けんすうがミルクカフェをやっていて、本来は掲示板業界のライバルなわけだけど、一回もライバルだと思ったことはない。

【けんすう】こちらを下に見てるからじゃないんですか?

【ひろゆき】でも、他のコミュニティサービスに対しても思ったことがないんだよね。

【けんすう】インターネット系は、何かを奪い合ったりしないからですかね?

【ひろゆき】たとえば、楽天とアマゾンは明らかに敵対していて、お互いに潰れてしまえと思っている気がするんです(笑)。でも、2ちゃんねるをやっていた時に、ミクシィとか他のコミュニティサービスが出てきても、面白いなと思って、「潰そう」「倒そう」と思ったことは一度もない。

【けんすう】なるほど。

【ひろゆき】ニコニコ動画をやっていた時も、YouTubeに寄生するところから始まっているので、「YouTubeさん流石だなー」って思っていました。

無能な経営者は人を動かすのがうまい⁉

【けんすう】ひろゆきさんの最新刊『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』でも書かれていましたが、人を動かす系の問題解決法は昔からうまいですよね。そのあたりは、やはり優秀な人は上手ですよね。

西村博之『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)
西村博之『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)

【ひろゆき】社員に「自分が動かなきゃマズい」と思わせるのは、会社でもうまくいくパターンだよね。「この会社、俺がいないと回らない」とか。

【けんすう】そうですよね。10年くらい前に、ひろゆきさんや堀江(貴文)さん、家入(一真)さんたちが共著で『就職しない生き方』という本を出しましたよね。編集者がインタビューをして原稿を作っていたのですが、まったく言っていないことを原稿にしてしまうトリッキーな方だったんです。それで、ひろゆきさんですら、「こんなことは言ってません」「これはこういう意味です」って言い出して。最終的に、普段なら自分で原稿を書かないような人たちが自分で文章を書くことになって、その結果、面白い本になったという稀有な例がありましたよね。

【ひろゆき】ああ、そんなことあったね。

【けんすう】あれは僕の仕事観を変えましたね。めちゃくちゃ仕事ができない感を出すと、周りの優秀な人がヤバいと思って頑張るんだ、というのは勉強になりました。

【ひろゆき】確かに、それはあるよね。ある程度、愛されている人じゃないと許されないけど。

【けんすう】「これ、このまま本になったらヤバいぞ」と思ったのか、ひろゆきさんもちゃんとメールを返していましたからね。

——ひろゆきさんにそこまでさせるっていうのは、相当ですね。

【ひろゆき】けんすうさんは自分の会社では、「俺のおかげで会社が回ってるぞ」という感じにしているんですか?

【けんすう】「この人(けんすう)をちゃんとコントロールしないとヤバい」と思ってくれているメンバーが多いような気がしますね。優秀な人が社長になってうまくいくパターンと、全然優秀じゃない人が社長になるから周りが頑張るパターンがあって、後者の気がします。優秀なんだけど打ち合わせに来なかったりする社長だと、周りが「来なくても大丈夫にしよう」となるのは、会社としては良い気がしますね。

【ひろゆき】優秀だけど、そうじゃない部分との落差がある人は、周りが「助けなきゃ」ってなるよね。その点、けんすうは、大抵のことはうまくこなすもんね。