即位にともなう大嘗祭のあり方を批判

令和の大嘗祭を翌年に控えた平成30年(2018年)のお誕生日に際しての記者会見(11月22日)で、次のように述べておられた。

「大嘗祭については、これは皇室の行事として行われるものですし、ある意味の宗教色の強いものになります。その宗教色が強いものについて、それを国費で賄うことが適当かどうか、これは平成のときの大嘗祭のときにもそうするべきではないという立場だったわけですけれども……宗教行事と憲法との関係はどうなのかというときに、それは、私はやはり内廷会計で行うべきだと思っています。……言ってみれば身の丈にあった儀式にすれば。……そのことは宮内庁長官などにかなり私も言っているんです。ただ、残念ながら……聞く耳を持たなかった。そのことは私は非常に残念だったと思っています」

今の憲法下での大嘗祭という伝統的祭儀のあり方は、政府・国会で検討を重ねた大きな“政治的テーマ”だった。もちろん宮内庁長官などの守備範囲を大きく越えている。

憲法の政教分離原則と、同じく憲法の世襲制にともなう「伝統的な皇位継承儀礼」である大嘗祭との、両者のバランスの取り方が丁寧に検討された。その結果、「国の行事」ではなく、かといって私的行事でもなく、「皇室の公的行事」と結論づけられた。天皇陛下も上皇陛下もそうした整理を受け入れてこられた経緯がある。

「立皇嗣の礼」は心外な行事だったのでは

たとえば天皇陛下は、皇太子として最後になった平成31年(2019年)のお誕生日に際しての記者会見で、次のようにおっしゃられた。

「即位に関わる一連の皇室行事の在り方については、平成のお代替わりの折の前例を踏まえ、政府において十分な検討を行った上で決定したものと理解しております。また、様々な事項の決定については、私も折々に説明を受けてきております」

また、翌年(令和2年〔2020年〕)のお誕生日に際しての記者会見(2月21日)でも、以下のように述べておられた。

「儀式の在り方についての質問ですが、平成へのお代替わりにおける一連の即位儀式の際、現行憲法下における初めての即位ということもあり、儀式の在り方について、慎重に検討がなされたと承知しております」

これを真正面から批判することは、憲法上は民意に基礎を置く建前になっている政府・国会と“政治的”に対立するばかりか、天皇陛下、上皇陛下のお考えにも背きかねない。

しかも、大嘗祭がご即位に当たって必ず行われるべき祭儀であることを考えると、秋篠宮殿下がもし即位されるおつもりなら、やがて祭儀の当事者になられるので、その時に深刻な政治的紛糾を招きかねないご発言は、おそらくお控えになったのではないだろうか。

そのように拝察すると、政府が新たに立案した「立皇嗣の礼」という前代未聞の儀式は、おそらく秋篠宮殿下にとって心外な行事だったはずだ。皇族数の確保策を検討した有識者の報告書に、現在の「皇位継承の流れをゆるがせにしてはならない」(6ページ)と書かれていたのも、残念ながら殿下のお気持ちとはかけ離れていたと言わざるをえない。

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