インフルエンザ迅速検査は「抗原検査」

<抗原検査>

抗原検査は、唾液などの検体の中にウイルス特有のタンパク質があるかどうかを調べる検査です。新型コロナの抗原検査では、検体は主に鼻咽頭ぬぐい液か唾液。ちなみに鼻に綿棒を突っ込むインフルエンザ迅速検査も抗原検査です。抗原検査の長所はなんといっても結果が出るまでの時間が短いこと。早ければ数分間で結果が出ます。検体を郵送しなくていいタイプの自己検査キットの多くは抗原検査です。短所は正確さに欠けることで、新型コロナに感染していても陰性の結果が出たり(偽陰性)、逆に感染していなくても陽性の結果が出たりすることがあります(偽陽性)。

<遺伝子検査(PCR検査)>

遺伝子検査は、ウイルスが持っている遺伝物質(核酸)の有無を調べる検査です。抗原検査と同じく鼻咽頭ぬぐい液や唾液が検体としてよく使われますが、痰や気管吸引液も使われます。抗原検査と決定的に異なる点は、核酸を増幅させる過程が入ること。きわめて微量の核酸であっても増幅して検出でき、抗原検査と比べると見落とし(偽陰性)が少ないのです。ただし、PCR検査は検体の温度を上げたり下げたりするサイクルを十数回から数十回繰り返すので、結果が出るまでに時間がかかります。最近では等温で核酸増幅が可能な遺伝子検査も実用化されていますが、それでも抗原検査ほどは速くありません。

このようにいろんな種類の検査法があり、目的によって使い分ける必要があります。流行初期の頃に舞台公演でクラスターが発生した事例では、出演者の一人が体調不良であったものの抗体検査では陰性だったことから出演しました。しかし抗体検査では、検査時点での感染の有無はわかりません。不適切な検査方法によって、かえって逆効果になった事例です。

マスクをした女性
写真=iStock.com/west
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︎どんな検査も「精度100%」ではない

さらに、どんな検査でも必ず正確な結果が出るというわけではありません。抗体検査や抗原検査と比べると、PCR検査ではより正確な結果が得られます。それでも100%正しいわけではありません。たとえば感染する能力を失った「死んだ」ウイルスの断片であっても、PCR検査で陽性になることがあります。感染後の隔離解除に必ずしもPCR検査での陰性確認が条件になっていないのはそのためなのです。