新型コロナウイルスの検査キットがドラッグストアやインターネット上で売られている。それらの結果は信じていいものなのか。内科医の名取宏さんは「それぞれの検査の種類と特徴を知ったうえで、選んで使うことが大切だ。中には無意味なものもある」という――。
検査キット
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検査の場所、種類、方法はさまざま

はじめまして。内科医の名取宏と申します。私は勤務医として日々患者さんと接していますが、医師にとって当たり前のことでも患者さんにはそうではなかったり、逆に医師が気付かないようなことを患者さんから学ぶこともよくあります。ですから、この連載が患者さんと医療者の距離を少しでも近づけることができるようなものになるといいなあと考えています。

さて、今回は新型コロナウイルス感染症の検査についてのお話です。2020年春頃は医療機関でもPCR検査がすぐにはできないという状況がしばらく続き、感染症を専門としたごく限られた医療機関でしか検査できないこともありました。しかし現在では、PCR検査をはじめとした複数の検査を受けられる場所が増えました。流行の波が来れば再度ひっ迫する恐れはありますが、ボトルネックは検査ではなく隔離場所や入院ベッドにあるでしょう。

最近では医療機関だけでなく、街中でも新型コロナウイルス感染症の検査を受けられる場所を見かけます。またドラッグストアやインターネット上の店などで自己検査キットを購入することもできます。検査の場所も種類も方法もさまざまで、いったい、いつどこでどのような検査を受けたらいいのか迷ってしまう方もいるのではないでしょうか。

じつは適切な検査を受けるためには、それぞれの検査の種類と特性を知っておくことが大事です。新型コロナに限らず、感染症の検査には、大きくわけて、鏡検きょうけん、培養検査、抗体検査、抗原検査、遺伝子検査があります。鏡検と培養検査は細菌感染症では今でも基本的な検査ですが、ウイルス感染症では臨床的にはほぼ使われていません。

︎「抗体検査」「抗原検査」「PCR検査」は何が違うのか

新型コロナウイルス感染症に関する主な検査は、抗体検査、抗原検査、遺伝子検査(PCR検査)の3つです。1つずつ説明しましょう。

<抗体検査>

ウイルスに感染したり、ワクチンを接種したりすると、私たちの体を守る免疫系がウイルスに対抗する物質「抗体」を作ります。この抗体の有無を採血によって調べるのが抗体検査です。抗体にもさまざまな種類があり、感染の急性期に増える抗体や、感染がおさまった回復期でも長い期間検出できる抗体などがあります。検査時点でウイルスに感染しているかどうかを判定するには適しておらず、過去にウイルスに感染したことがあるかどうか、ワクチンによる免疫が十分についているかどうかを調べる目的で使用されます。