「尊厳をもって生きるほうが、大変なんですよね」

「ここ横須賀市は、“誰も一人にさせないまち”を理念に掲げています。在宅療養を希望する人が6割以上いて、みなさんよい訪問医を求めていますが、訪問看護ステーションなら24時間365日稼働していますし、さまざまな家で過ごすフォローができます。体のことだけでなく、社会的なことまで関われるように、みんなで努力しています」

「まちの診療所つるがおか」で訪問看護に奮闘する佐藤清江看護師
「まちの診療所つるがおか」で地域支援を担当する佐藤清江看護師(撮影=笹井恵里子)

今回紹介した妻は「日本尊厳死協会」に入会していて、死期が迫った時に「延命治療を断る」という強い意志を持っていた。

人工呼吸器や胃ろうなどによって「生かされる」のではなく、安らかで自然な死を迎える――そんな希望をもって妻は自ら調べて、千場医師に連絡をとったのだという。

「死ぬ時のことも大事ですけど、尊厳をもって生きる。そっちのほうが大変なんですよね」

千場医師の言葉に、私は深くうなずく。死ぬ瞬間よりも、いかに最期に向かう日々を心地良く過ごすか。夫も妻も自分たちは不幸でない、孤独でないと感じているかもしれない。けれど妻はおそらく一抹の寂しさを感じている。夫は妻の死後に初めて孤独を感じ、孤立する可能性が高いだろう。(続く。第13回は4月7日11時公開予定)

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