【田中】そうですね。渋沢健さんは、40歳のときに大きなスイッチが入って、それから使命感をもってさまざまな活動をされていらっしゃいます。今まさに岸田首相に対して直接助言をされる立場となり、今年はますます活躍が期待される1年だと思います。

最後にもうひとつお伺いしたいのは、「と」の力についてです。渋沢さんにとって今年は何と何を「と」で合わせていくのでしょうか?

【渋沢】私がなぜ、渋沢栄一に関心を持っているかというと、「過去と現在」を「と」でつないでいるからです。もともと私のキャリアはNGOではじまり、日本と海外の架け橋になれればいいと考えていました。「日本と海外」その後は、「ノンプロフィットとプロフィット」を「と」でつないでいます。

成長する組織、衰退する組織を見分ける3つのNGワード

昭和の成功体験を持っている人たちと、これから成功体験を作らなければいけない世代を合わせることも必要です。何と何を合わせればいいのか。いろいろなものを合わせていけば、そこに新しいクリエーションが生まれると思っていますし、「できる」か「できないか」ではなく、やるためには何をどうあわせればいいのかを考えていく必要があると思っています。

【田中】やりたければ、できるようにするということですね。

【渋沢】最後に一言お伝えさせてください。これからの10年で日本の会社はすごく変わると思っています。人口動態と時代の変化を理解して変わっていく会社と、今のままどう逃げ切ればいいのかを考えている会社があるとすると、当然ながら前者の方が10年後には次のレベルに行き、後者は遅れをとっているでしょう。

これからは3つの言葉をNGにして欲しいと思います。たった3つの言葉をNGにするだけで、日本の企業・社会はかなりよくなると思います。

【田中】ぜひ、お聞かせください。

【渋沢】まずは「前例がない」。そして「組織に通りません」。最後が「誰が責任を取るんだ」です。

まず「前例がない」とは、例えば10年を振り返ったときにこの会社は1つの前例も作れなかったということですよね。冗談みたいな話ですが、過去30年間、いろんな側面で聞いてきた言葉です。これからの30年間は聞きたくないと思います。

「組織に通らない」については、担当者としてこの案件はNGですというのは理解できますが、「私はいいと思うけれど、これは組織には通りません」というのは、仕事をしてないということにほかなりません。

「誰が責任を取るのか?」については、当事者、上司、社長以外に誰が責任を取るのか、ということですよね? 答えは明確だと思います。

これらの言葉を発する組織に勤めているのであれば、有望な若者を求める別の会社に行ったほうがいいと思います。

【田中】文京学院大学の島田理事長が『渋沢栄一 社会企業家の先駆者』という著書を出されています。そこでソーシャルアントレプレナーという言葉も使われていらっしゃいますが、まさにソーシャルアントレプレナーの第1号は渋沢栄一だったと思います。

最後の3つのNGワードについてもアントレプレナー、スタートアップであればありえない言葉ですからね。スタートアップのカルチャーで企業を経営していく必要があるということでしょうか。本日はご多忙の中、本当にありがとうございました。

【渋沢】ありがとうございました。

渋沢健氏と田中道昭氏
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