そんなに急に切り替えるのは無理だ、という人もいるかもしれない。しかし、切り替えることができるかどうか、集中できるかどうかは、「生まれつきの性格」などでは断じてない。実際に切り替え、集中することを繰り返すことで、次第に眼窩前頭皮質や背外側前頭前皮質の回路を鍛えることができるのだ。

いわば、筋トレと同じこと。使っていない回路は次第に衰える。使えば使うほど強くなる。最初はもたもたしていても、ぱっと切り替えて集中することを繰り返していれば、次第にそんな脳になってくる。

もともと、瞬時に切り替えてトップスピードに持っていくことは、日本の武術の基本的な考え方だった。どんなにリラックスしていても、敵が襲ってきたら瞬時に最高のパフォーマンスをしなければ、命が危ない。

坂本龍馬が宿屋でおりょうとくつろいでいるときに新撰組が襲撃してきたら、とっさに対応しなければならない。

「準備をするから、3分間部屋の外で待ってくれ」などと言っても通じない。

「グズ」は生まれつきの性格ではなく、鍛えれば時間術の達人になれる。(PIXTA=写真)

現代のビジネスの現場では、命をとられるわけではないけれども、とっさに切り替えてトップスピードに入る必要があることに変わりはない。そのためにも、前頭葉の関連する回路を鍛えたい。

脳を鍛えるのは、現場における実践あるのみ。まずは生まれつきの性格などという思い込みから解放されて、今日この瞬間を全力で生きることから始めたらどうか。

脳の中を見ることはできないけれども、やればやるだけ、確実に回路は強くなっていく。それこそが、時間を使いこなす現代の「アスリート」への道である。

(写真=PIXTA)