必要なものと、不要なものを選び出す

人の心の容量は決まっているように思います。そのサイズは人によって違うとも思います。しかも、心の容量がいっぱいかどうかは、人からも自分からも見えません。そこに、いいことも、よくないことも入れっぱなしにしておいたら、知らないうちに容量がいっぱいになり、心がパンクしてしまうかもしれない。そうならないよう、中に詰まっているものを1個ずつ外に取り出していく感覚で紙に書き出していくんです。

書き終わった紙は、後で見返して必要だと思ったものは、いつも持ち歩く手帳に書き写し、元の紙は捨てています。なかにはぐちゃぐちゃに書いたのに、なぜか捨てられないメモもあって、そういうものはそのまま手帳に挟んでいます。自分にとって必要なものとそうでないものを、2段構えで選択している感じです。

イヤな気持ちを書き出すと、少しずつ自分を客観視できるようになり、それまでは見えなかった他人の気持ちに思いを巡らせることができるようになります。「あの時、私もイライラして対応してしまったな」「あの人にも事情があったのでしょう」といった気持ちが芽生えてきます。イヤな気持ちを翌日に持ち越すことがなくなり、少しずつ心が軽くなっていきます。

これを習慣化すると、少しずつ人を認めること、あるいはゆるすことができるようになっていきます。人からの助言を素直に受け取れるようになると、いいご縁も巡ってくることが多いように思います。

紙に書いて「心の断捨離」を

人生は試練の連続です。それでも生きていかなくてはなりません。そんな時、少しでも身軽な方が、前に進みやすい。ですから、イヤな気持ち、モヤモヤした気持ちは不要な荷物と同じだと思って、紙に書いて断捨離してしまいましょう。自分だけが見る分には何を書こうと自由です。

私がネット中傷を受けていたころ、悩みを聞いてくださった方の中には、「もう言わなくていいよ」「思い出さなくていいよ」とおっしゃる方もいました。だけど、当事者にしてみたら重くてしょうがない、吐き出したくて仕方がないんです。今思えば、聞いている方もしんどかっただろうということがよく分かります。誰の心の中の川も、常に綺麗な水が流れているほうがいいに決まっていますものね。

昨年は、天台宗を開いた最澄様がお亡くなりになってから1200年の「大遠忌だいおんき」でした。その教えが今も廃れないのは、時代は変われど、長らく人の役に立ってきたから。ですから、心が苦しくなった時、その教えに心を寄せていただけるといいと思います。

今月のひとこと

今回の言葉は、ご遺誡ゆいかい(最澄が残した言葉)からの一節です。「怨みに対して報復すれば怨みの連鎖は消えませんが、穏やかな心で怨みに相対すれば怨みが消えていく」という意味です。ぜひ、心の中の刃が誰かに向かいそうになった時、この言葉を思い出してみてください。

(構成=山脇麻生)
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