「ブラック鳥海」への声かけで、心のバランスを保つ
練習前後の準備をしながら、自分のことをよく思っていない人もいる中で共同生活を送り、さらにはコミュニケーションをとってプレーする――。いくらメンタルの強さを自覚する僕でも、さすがにこたえる日々を支えてくれたのが、もうひとりの僕だった。
ある日、彼は僕にこう言った。
「このチームはバスケをやるために集まってる集団なんだから、バスケで結果を出せればいいんじゃないの? 誰よりも練習して、誰よりもうまくなって、誰もが納得するくらい圧倒的な存在感を出せよ」
気心の知れた仲間にグチをこぼして、相手がそのグチに対して自分以上に怒ってくれたりすると、逆に毒気が抜かれたような気持ちになることがある。このとき僕は、それをセルフでやっていた。
言うなれば「ブラック鳥海」が心の奥底にくすぶっていた毒を吐き出してくれたことで、僕は前向きな気持ちで行動できるようになったのだ。
「大好きなバスケットをやって、東京パラで戦いたい。そのためには、みんなの信頼を取り戻せるように、しんどくても頑張るしかない」と、明確な意志を強く持ち直すことができた。
相反するふたりを状況に応じて使い分け、自分の機嫌をとる。
「ふたりの自分」は、たぶん僕にとって心のバランスを保つための都合のいい分身なのだろう。でも、僕はそれでいいと思う。
他人が常に、自分の望むタイミングで望む言葉をくれるとは限らない。だったら自分で自分を肯定し、大切にして、精神衛生を保ったほうが絶対にいい。