平常心を身につければ、焦りも動揺もしなくなる

劣勢になったときやミスがつづいたときも、あせったり動揺したりはしなかった。

初戦のコロンビア戦でトリプルダブル(得点、アシスト、リバウンドの3部門で2ケタ以上の数字を挙げること)を達成したこともあってか、対戦相手は僕の特徴をしっかりスカウティングし、それを踏まえて僕のプレーを抑えにきた。

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写真=iStock.com/wingmar
※写真はイメージです

でも、そういった対策を苦しいとは感じなかった。「僕が目立てば目立つほど、他のメンバーのマークが甘くなって点をとりやすくなる。どんどん僕に注目してくれ」と考え、コートにいる5人全員でゲームを作り上げた。

大会期間中はインスタグラムへの反応が急激に増え、コロンビア戦の後には一気に2000人以上の人がフォローしてくれた。とても驚いたが、それをプレッシャーに感じたり、「もっと活躍してやろう」と思ったりすることはなかった。

また、インスタグラムのメンションや多種メディアでの取り扱いを見てみると、僕がコロンビア戦でやった「バウンドストップ」(ボールを大きくバウンドさせてから車いすを急ブレーキで止める)で相手マークを外し、シュートを決めたプレーがバズっていたようだが、これに関しても自分の中で「やってやったぜ」という感覚はなく、「このプレーで盛り上がってくれたんだ!」と思っただけだった。

「自分自身のことをよく知ること」が大切

日本代表でメンタルトレーニングを担当する田中ウルヴェ京さんは、「メンタルトレーニングにおいて大切なのは、自分自身のことをよく知ること」と話していた。

自分がどういう人間で、どんなときにイライラしたり落ち込んだりするのかを知っておけば、同じ状況に陥ったときに、「あ、今、イライラしてるな」と冷静に事実を受け止めることができるようになる。

そしてその受け止めが感情に任せた行動を抑止し、いいパフォーマンスを発揮することにつながるのだそうだ。

僕らは「セルフ・トーク」という手法でこれを身につけた。自分や他の選手のイライラした感情に気づいたとき、以下のようなことを自分自身と対話するのだ。

・なぜイライラしているのか
・誰に対してイライラしているのか
・イライラの感情はどうやったらプラスに変わるのか

感情に任せたプレーをしてしまうと、冷静な判断ではないためミスにつながりやすかったり、審判にイライラすることになる。実生活なら、人に傲慢な態度をとる、暴言を吐く、物にあたるといったことになるだろうか。

感情に任せて突っ走っても、いい結果は生まれない。これは、世の中のありとあらゆることに言えることだろう。