輸入食料品・原材料の価格上昇も日本を襲う

だが、ウクライナでの戦争がエスカレートして、ロシアによる民間人への攻撃が激化した場合、さらなる経済政策が必要になり、ドイツなど欧州諸国がエネルギー禁輸にまで踏み切る可能性もある。そうなった時に、日本がサハリン利権を死守できるかどうか。欧米からの圧力もあって、放棄せざるを得なくなる可能性もある。そうなると日本のLNG調達コストはさらに上がり、電気料金も上昇を続けていくことになりかねない。

電気代
写真=iStock.com/Yusuke Ide
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日本を襲うのはエネルギー価格の上昇だけではない。円安が進めば、輸入物価全体が上昇することになりかねず、輸入食料品・原材料の価格上昇が生活を圧迫することになりそうだ。

3月18日に開かれた日本銀行の金融政策決定会合後の記者会見で、日銀の黒田東彦総裁は、それでも円安を容認する考えを示した。これをきっかけに東京外国為替市場では一時、1ドル=119円台にまで円安が進んだ。黒田総裁は「円安が経済・物価を共に押し上げ我が国経済にプラスに作用している基本的な構造は変わりはない」と、あくまで円安がプラスだ、としたのだ。

「不景気なのに物価が上がる」スタグフレーションの入口

日本の場合、円安を容認せざるを得ない理由がある。米国で起きているインフレは、経済成長と共に物価上昇が起きているため、金融の量的緩和の縮小を早々に決め、利上げに踏み切る姿勢を鮮明にしている。景気の過熱を抑える金融引き締めという従来の金融政策が機能するのだ。

ところが、日本経済は前述の通り、新型コロナからの回復が遅れ、金融緩和をやめれば景気が失速する懸念もある。金融緩和を続けざるを得ないわけだ。不景気なのに物価上昇が起きることをスタグフレーションと呼ぶが、まさに日本経済はそのとば口に立たされているように見える。

黒田総裁はスタグフレーションではないかという質問に、「そういう恐れが日米欧にあるとは思っていない」と述べて否定していたが、米欧は少なくとも現状ではスタグフレーションではないため、金融引き締めに動けるが、日本は明らかに不景気なのに物価が上昇し始めていることは歴然としている。結局、日本は金融政策の手足を縛られているとみるべきだろう。