「これしか役割がない」という思考は不幸のはじまり
幼い子どもは親に見捨てられると生きてはいけません。親が世界の全てであり唯一依存先だからです。しかし、子も長じれば、友達や仕事や配偶者や家族など次々と親とは別の依存先を見いだし、それぞれの相手との間に自己の社会的役割を生みだしていくものです。つまり、「社会的役割の多層化」です。多層化することでまた新たな役割も自然と生まれてきます。
夫に限りませんが、これしか役割がない。ここにしか居場所がない、という唯一依存からは脱却したほうがいいでしょう。ひとつの役割の剝奪を自己の全否定につなげてしまう思考の癖こそ不幸のもとです。
とはいえ、ご存じの通り、日本の婚姻数は年々減少し続けています。しかし、初婚数が減るのとは裏腹に夫の再婚数は増えています。1970年代まで1割未満だった婚姻数に占める夫再婚の割合は、もはや20%に達しようとしています。何度も離婚再婚を繰り返す「時間差一夫多妻男」がいることからしても、夫や父親という社会的役割にすがらなければ生きていけない男性というのが一定数存在するのかもしれません。