「失業+離婚+一人ぼっち=孤独感」だけが理由なのか

自殺の動機を紐解けば、男女ともに一番多い健康問題による自殺を別にして、男性は圧倒的に経済・勤務問題で自殺しています。つまり、借金や生活苦などお金の問題と会社などにおける勤務環境の問題です。これも女性はほぼ経済・勤務問題では自殺しません。一方で、<この20年で「離婚したい理由ベスト3」が激変…男たちが夫婦関係で悩んでいること>で書いた通り、妻からの離婚理由の第1位は夫の経済問題です。

何らかの事情で夫が失業して無職になると、経済的理由による離婚を妻から突きつけられることになる。妻も子も失い、場合によっては自宅も失い、夫は1人でアパート生活を始める羽目になる。そうして、職場もない、家庭もない状態で誰とも接点がなくなった元夫は、孤独感に苛まれ、精神的変調をきたし自殺の道へ突き進む……という仮説も考えられます。

思わず納得してしまいそうな物語ですが、それぞれの相関があるからといってそこに因果があるとは限りません。失業や離婚した男性が全員自殺するわけではないですし、有職者でも有配偶者でも自殺はありえます。結婚して家庭を持ち、妻や子どもに囲まれた光輝く温かい家庭に幸せを感じていた男性が、失業+離婚+一人ぼっちが一緒に来ることで耐えがたい孤独に苦しむ姿も想像できますが、だからといってそうした感情的な「孤独感」だけが離婚男性を自殺へと向かわせるのでしょうか?

「離婚と自殺」に強い相関がみられるのは日本だけ

ここで比較のために、日本以外の欧米諸国の状況も見てみたいと思います。自殺率と失業率と離婚率の3つの指標のそれぞれの相関を、日本に加え、米国、ドイツ、スウェーデン、イタリアと比較しました。

失業・自殺・離婚相関各国比較(男性)
※各国比較のため各数値は国際統計を使用。離婚率と自殺率はOECD統計より。自殺率はOECD統計の各国間の年齢構成差異による影響を除去した年齢調整値を使用。失業率はILOのモデル推計を使用。期間は1990~2019年、不明値がある年は除去して相関係数を算出。

日本だけが「失業と離婚」「失業と自殺」「離婚と自殺」の3つのすべてで強い相関がみられます。他の欧米諸国は、「失業と離婚」ではドイツが日本並みに強い相関がありますが、他国はそれほどでもありません。「失業と自殺」も日本以外はほぼ無相関です。「離婚と自殺」に至っては、欧米4カ国すべて負の相関であり、イタリアに関してはむしろ「離婚が多いほうが男の自殺が少ない」という状況です。