「コンテンツ消費」の様式が世代ごとに違う

中高年世代はいまほど娯楽が豊富にあるわけでもなければ、迅速な通信が可能なデジタルツールもない、いうなれば選択肢の乏しい時代に多感な時期を生きた。それが幸運にも、ひとつのコンテンツをじっくりと鑑賞し対話するという消費スタイルを養った。若い世代と比較してどちらが良い悪いという話ではなく、コンテンツ消費の様式の世代ごとの違いの問題なのだ。

映画館の座席
写真=iStock.com/maksicfoto
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ひとつ楽しむために時間的にも身体的にも長大な拘束が発生してしまうコンテンツはいま、ごく少数の例外をのぞいて軒並み苦境に陥っている。一方で、YouTubeやTikTokなど短い時間で楽しむことができ、なおかつ身体的拘束も受けずどこでもリラックスして楽しめるコンテンツおよびプラットフォームは需要がうなぎ上りになっていて、「コスパのよい生き方」を好む若者たちの可処分時間の奪い合いを演じている。

YouTubeで人気なのは「30秒~1分間」の動画

若者たちに人気を集める動画投稿プラットフォームであるYouTubeでは、ますます「効率性」への先鋭化が進んでいる。

YouTube内で、新たなトレンドの中心にあるのは「ショート動画(Shorts)」と呼ばれる、ひとつにつき長くても30秒から1分間の動画群であることは、上の世代の人びとにはあまり知られていない。

これまで数十分以上の動画を主として配信していたHIKAKINをはじめとする著名なYouTuberたちもこの潮流に対応している。数十分の長さの通常動画のほかにも、数多くの「ショート動画」を断続的にリリースしている。それらも通常動画と同じかそれ以上の再生回数を叩き出す。以前なら、視聴者が数分から数十分見続けなければやってこなかった「楽しさ」が、数十秒に凝縮されて提供される。これほど効率的なものはない。しかも近頃では、通常動画も倍速で視聴されていることがもっぱらだ。楽しい動画を見ているときにさえ、若者たちは《なにか》に追われている。