花粉症による業務効率の低下を防ぐには、どうすればいいのか。産業医の池井佑丞さんは「花粉症患者の割合は国民の25%と言われている。集中力や判断力の低下は無視できない問題だ。個人と職場の両輪で対策をしたほうがいい」という――。
花粉
写真=iStock.com/TAGSTOCK1
※写真はイメージです

国民の25%は花粉症患者と言われている

近頃は暖かい日も増え、ようやく春の訪れを感じられるようになってきました。寒さが落ち着きはじめるこの季節、多くの方が気にされていることといえば、花粉症ではないでしょうか。

日本において、花粉症患者の割合は国民の25%ほどとも言われています。花粉症は花粉を原因とするアレルギー疾患の総称です。アレルギー症状を引き起こす花粉はいくつか種類があり、一年を通して各地で飛散しています。ですが、圧倒的にスギ花粉・ヒノキ花粉による花粉症に悩まされる方が多いため、それらの花粉が多く飛散する春先が主に花粉症シーズンと捉えられています。

この季節、花粉症にお悩みの方にとっては生活の質(QOL)だけでなく、集中力や判断力といったパフォーマンスの低下も無視できない問題となっています。

薬を飲んでも飲まなくてもパフォーマンスが落ちる

花粉症がどれだけパフォーマンスに影響を与えているのかについて、製薬会社のノバルティスファーマが行った調査の結果をご紹介します(ノバルティスファーマ「【グラフ集】花粉症重症度調査」2020年)。こちらの調査によると、花粉症により仕事や勉強、家事などに支障があると答えた割合は6割を超えています。症状がある時に集中力低下を自覚している割合も6割近くに上りますし、3割が仕事でのミスが増えると回答しています。

別の研究では、アレルギー性鼻炎による労働生産性低下に伴う経済的損失は年間4兆円を超えるとも試算されています(岡本美孝「鼻閉を伴うアレルギー性鼻炎に係わる経済的損失」医薬ジャーナル 50巻3号 2014年3月)。

パフォーマンスに影響する主な症状は、鼻水や鼻づまり、目のかゆみ等が挙げられます。これらの症状が睡眠を妨げ睡眠不足につながることで、日中の活動に影響を与えるケースも多いです。薬で花粉症の症状をある程度抑えることは可能ですので、花粉症対策として薬を用いている方は多くいらっしゃいます。ですが、花粉症の薬で眠気を感じた経験をお持ちの方や、眠くなりやすいので薬の使用をためらうという声も多く聞かれます。薬を使用してもしなくても、パフォーマンスへの影響度が大きいことが、花粉症のやっかいな点とも言えます。