未来の災害支援や制度設計に活かすためのもの
――阪神・淡路大震災で災害関連死という考え方が誕生してから、3.11、熊本地震、2018年の西日本豪雨などで累計5000人以上が災害関連死に数えられました。災害のたびに報じられ、災害関連死という言葉は広まりましたが、実態はほとんど知られていません。小口先生は災害関連死をどのように受け止めているのですか。
法的には、「災害弔慰金の支給等に関する法律」において、災害と死の間に法律上の相当因果関係が認められるケースを指します。災害弔慰金は、家族を亡くした遺族に対し、自治体が支給するお見舞金です。直接死だけではなく関連死でも支給され、支給例としては、被災後に通院できずに持病やケガを悪化させて亡くなったり、避難所で感染症にかかって命を落としたり、家族を喪ったショックで精神疾患等を患い自殺に至ったケースなど様々です。
災害関連死と認定されるためには、現在の運用では、遺族が市町村に災害弔慰金の申請をする必要があります。その後、自治体が開いた審査会で災害と死の間に法律上の相当因果関係が認められれば災害関連死となり、災害弔慰金が支給されます。
ただ、災害関連死という言葉自体は、色々な場面で使われているので、多角的に見ていくべき必要があるのだと思っています。
まず、当然のことではありますが、すべての被災者支援制度は、災害関連死を一人でも減らすためにあるということができます。死者を減らすためにあるわけです。
そうすると、災害関連死というのは、現在の被災者支援制度が及ばなかった事例ということができます。本当は死者を0人にしたいけれどできなかった結果という見方です。
現在の制度が及ばなかった結果なのですから、そこには、制度改善のための教訓が眠っています。災害関連の制度を改めるなら、まず、災害関連死をひとつひとつ検証し、どうすれば救えたのかを検証し、同じような悲劇が起こらないよう制度を改善していくことが重要です。
災害弔慰金は、その名のとおり遺族に弔意を示す制度ですが、弔意を示すという意味でも教訓を活かすことは重要です。ご遺族にとって何より大切なのは、家族の死が無駄にならず次の教訓として活かされることだからです。教訓として活かし制度改善に繋げることが、何よりの弔意になるのだと思います。