直接死の4倍以上の人が、避難中に命を落とした
2016年の熊本地震では、犠牲者273人のうち、80%以上の218人が「災害関連死」だった。
家屋倒壊による圧死や、火災による焼死、津波による溺死などの「直接死」に対し、避難生活で持病が悪化して死期を早めたり、心身に不調をきたして自ら命を絶ったりするケースを「災害関連死」と呼ぶ。熊本地震での直接死は50人。その4倍以上の人たちが、大災害を生き延びたのに、避難中に命を落とした。この事実をどう受け止めるべきなのか。
熊本地震から4年後、忘れられない出会いがあった。
4歳の娘を亡くした宮﨑さくらさんである。娘の花梨ちゃんは心臓に疾患を抱えていたが、手術で完治し、春から幼稚園に通う予定だった。しかし術後、熊本を2度の激震がおそった。老朽化した病院は倒壊のおそれがあり、福岡への転院を余儀なくされた。移送中、病状が悪化し、5日後に帰らぬ人となる。幼い愛娘を喪った悲しみとともに語られた母の言葉に、災害関連死を考えるヒントがある。
「いままさにICUで治療を受ける子も、手術を待つ子もいる。そんな子どもたちが入院する病院を今日、明日、地震がおそうかも知れません。どうやったら花梨が助かったかを考えることが同じような子どもたちを守ることにつながるのかな」
もしも病院に耐震設計がなされていれば、あるいは搬送がスムーズに行われていれば、花梨ちゃんはいまも元気だったはずだと感じずにはいられなかった。いや、熊本地震の災害関連死者218人すべてが、個々のニーズに合った迅速な支援を受けていれば、生きながらえる可能性があった。視座を変えれば、災害関連死は、防災措置や支援政策の瑕疵が招いた悲劇とも言えるのではないか。
私が災害関連死に関心を抱いたのは、3.11から1年後のことだった。