申請が増えれば教訓も増える

――小口さんはどのような形なら、遺族が納得感をえられると思いますか。

遺族の納得感という意味で言えば、全件認定なのだろうと思います。遺族は、関連死だと思って申請しているのですから。そこは金額とは別の問題だと思っています。他方、申請があったら全部認定というのは、制度としてなりたちません。

ただし、この法律の目的は、遺族に弔意を示すことにあるわけですから、「災害による死ではない」として関連性を否定し、遺族を傷つけるという事態は極力避ける必要があるはずです。

そう考えると、それこそ法律の中で、明文をもって広めに認定をするんだということを明記し、ただ、その関連性の程度に応じて弔慰金の額を調整できるようにするという枠組みは、「弔意を示す」という目的に合致するのではないかと考えています。

そして、広めの認定が実現すれば、災害関連死の申請自体も増えていくはずです。仮設住宅という密なコミュニティの中、あそこのあの人は関連死として認定されたという情報は、「じゃあ、私も申請してみようか」に繋がるからです。

申請が増えるということは、行政にとっては教訓が増えるということを意味します。これらの教訓をしっかり制度改善に繋げていけるならば、災害による死を着実に減らしていくことができるでしょう。

つまり、制度を改めることで、幅広く弔意を示せるだけではなく、申請も、災害関連死の認定も増えるだろうから、将来の災害の教訓にすべき事例の蓄積も進むであろうと考えています。

弔意と生活保障を切り離す

そうなると、これまで災害弔慰金に頼ってきた遺族の生活保障はどうなるのか、という疑問を持つ人もいるでしょう。そこは災害弔慰金法の法改正とパッケージで、新たに遺族の生活再建を支える制度をつくればよいのだと思います。

いってみれば、現在の災害弔慰金が果たしている、遺族への弔意の部分と、遺族の生活保障の部分を切り分け、生活保障のための制度は別で立ち上げればよいのだと思います。

実際、行政から災害関連死と認められると、遺族は民間も含め、有形無形のサポートを受けられるようになります。災害関連死に認められて、はじめて災害遺族になり、義援金などが支給されますし、子どもさんがいるのであれば災害遺児として奨学金も受けられるようになります。また、自治体の慰霊祭などに、遺族として招待されるようになります。遺族の精神面に与える影響は極めて大きいわけです。

しかし、災害関連死として認定されなければ、これらは全てなくなってしまうわけです。誤った認定を避けるためであるなら、制度自体に見直しはあり得るのだと思います。