依然として存在するアジア系への偏見

アジア系はアメリカの歴史の中で「遅れてきた移民」である。19世紀半ばからまず中国系の移民が金採掘や大陸横断鉄道の建設要員として流入し、その後に日系人が入っていく。ただ、遅れてきた移民であるため、ハワイ州の他、カリフォルニア州などの西海岸中心に居住した。

白人社会から見れば、アジア系には特定の「永遠に異質な(forever foreign)」ステレオタイプがある。背が低い、メガネ、従順、集団主義、英語が下手、米、魚中心の食事などである。現在なら、ここに車の運転が下手、技術者、医学者、バイオリン演奏家なども加わる。

多くが思い込みにすぎないはずだが、それでも見た目の違いは大きく、中国系や日系に対して19世紀後半から20世紀には排斥運動が起こる。真珠湾攻撃が起こると、「日系人はスパイとなる可能性がある」として、アメリカ本土に住む約12万人の日系人全員に対して、強制収容が行われた。

もちろん、このような負の歴史は過去のものである。ただ、いまだにアジア系を「異質だ」とする偏見は完全には払底されていない。

新型コロナウイルスで一気に火が付いた

その偏見はちょっとしたことで一気に表面化する。それがコロナ禍の衝撃である。

カリフォルニア州立大学サンバナディーノ校の「憎悪と過激主義研究センター」は、2月初め、アメリカの主要14都市でのアジア系住民に対するヘイトクライムのデータを明らかにした。それによると、2021年のヘイトクライムは前年比で約3倍以上(339%増)になっている。この数字はまだ予備的分析だが、少なくとも前年よりは大きく増えているのは確かだろう。

コロナ感染が広がったのはアメリカでは2020年3月である。このセンターによると、ヘイトクライムの上昇はコロナ感染が一気に広がった2020年3月と4月に急増した。

暗いオフィスでFBIのジャンパーを着たベテランが写真を見つめている
写真=iStock.com/South_agency
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アジア系の被害が増加していることを示すFBIのデータ

都市部だけでなく、全米規模でもアジア系に対するヘイトクライムは上昇しているのは間違いない。

司法省傘下のFBI(連邦捜査局)の統計データは2020年が最新だ。

全米規模ではアジア系に対する同年のヘイトクライムは全米で279件。2019年からは77%増加している。

この数字の増加がいかに深刻かは、他の人種に対するヘイトクライムと比べると明らかである。黒人2871件(2019年から49%増)、白人869件(同30%増。*ユダヤ系などが含まれる)、ヒスパニック(517件、2%減)とアジア系の増加率が目立っている。