ターゲットは「広く、広く」が第一

もちろん、「誰にでも好かれたい人は、結局誰にも好かれない」という状態に陥ってしまっては事業として成り立ちません。プリ機に限らず、商品やサービスにはしっかりしたコンセプトが必要です。コンセプトがはっきりすれば、ユーザーもはっきりします。メインとなるターゲットは明確にしながらも、対象となるユーザーは広く、広く、を心掛けることが大切です。

意外に多くの企業が陥りがちなのは、コンセプトが狭すぎて、お客さんの層も狭くなってしまい、ビジネスとして成り立たないという状態です。あまりにもターゲットを絞りすぎた機能を搭載した商品やサービスを提供するのは危険です。

特化しすぎて失敗した3Dテレビ

2000年代に突如登場して今や誰も話題にしなくなった「3Dテレビ」は代表例のひとつでしょう。眼鏡をかけると映像が立体的に見えるテレビです。これは、液晶テレビで大きさの違いしか生み出せず、いかに高画質化するかというこれまでの路線の延長にすがりつくしかなかった電機業界の苦境が背景にありました。価格競争にさらされたくないため、少しでもこれまでと違った製品を出したいと各社こぞって投入しました。

3Dテレビはコンセプトは明確でした。「立体感」です。ただ、当時は3D技術が未熟だった上、3Dテレビは立体感を擬似的に見せるだけで人間が通常の状態で目に見える立体感とは異なります。何よりも眼鏡をかけるのが面倒くさい人が大半でした。

サッカーゴールが3Dに映るテレビ
写真=iStock.com/adventtr
※写真はイメージです

居間で何人もの人が一緒に眼鏡をかけてテレビを見る姿は想像できません。コンセプトが明確でも、ターゲットは「新しい物好き」しかおらず少数でした。

コンセプトはあえて尖らせすぎないように細心の注意を払いましょう。たとえば、プリ機の開発では1年間に約9商品を新しくリリースしますが、その中にはギャルをターゲットにした商品もあれば韓国好きの女の子に訴求したい商品もあります。同時にターゲット以外の女の子たちに「これはギャルの子たちが撮るもの」「韓国、別に興味ないし」と思われないようにも腐心します。ひとつの商品を開発するのに約1年かけますが、初期にコンセプトを定めたあとは「自分がターゲットじゃない感」を抱かせないよう調整を繰り返す過程ともいえるかもしれません。