日本料理の特徴は何か。銀座小十・料理長の奥田透さんは「切ることを何よりも大切にしている。だから日本料理の料理人の世界では、『切れる人』が一番の褒め言葉になっている」という――。
※本稿は、奥田透『日本料理は、なぜ世界から絶賛されるのか』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。
「割烹料理」の語源を読み解くと…
日本料理の調理法の基本は、何といっても「切る」ことです。
「割烹料理」という言葉がありますが、この言葉の語源は、「割主烹従」料理です。
「割」は割る、つまり切るということです。「烹」は煮る、火を通すということです。
つまり切るが「主」で、煮るが「従」う、まずは切ってから火を入れるということです。そしてそのような料理を割烹料理、出す店を割烹料理店と言われるようになったのです。
ですから、日本料理では、「切る」という調理法をとても大切にしています。なぜなら、切り方によって味が変わるからです。
まず、そもそも切る大きさによって味が変わります。また、大きさといっても実に様々なバリエーションがあります。
ちょっと思いつくままに並べても、大きい・小さい、厚い・薄い、長い・短い、というのがあります。そして、雑に切ると、味がどんどん抜けていったり、仕上がりがどんどん崩れていったりするので、切れる包丁で、作る料理にあった寸法できちんと切ることが大切です。
そうすると味が食材の中に収まり、食べた時に口の中で味が膨らんだり広がったりと、作る側の意図した料理がダイレクトにお客様に伝わるのです。
料理で、切れ味や切り口にこだわるのは、世界で日本料理ぐらいではないでしょうか。なぜなら、これは道具である包丁を見れば分かることです。