日本の包丁と海外の刃物の大きな違い
西洋料理で使う包丁は、両刃包丁といって、両面に刃がついています。しかし、日本料理で使う包丁は、片刃包丁といって、片方だけにしか刃がついていません。
両刃包丁は、食材に均等に力が加わるので、誰でも切りやすく、日本でも家庭用包丁に使われていますが、日本で普及したのは昭和以降です。
片刃包丁は慣れないとうまく扱えませんが、魚を切ったり、かつらむきをしたり、食材を薄く切ったりするのに向いています。なによりも片刃包丁の方が、刃が片側にしかついていないため、切る時の力が食材にスムーズにかかりやすく、切り口が美しいのです。
また、日本の包丁と海外の刃物で、大きな違いは材質です。日本の包丁は鋼製ですが、海外の包丁はほとんどがステンレス製です。
鋼とステンレスでは、切れ味が全然違います。今は、ダイヤモンドに近いような素材のステンレスも出てきて、料理人の中にも「さびにくく、切れ味もよい」と言っている人もいますが、私はやはり鋼製の包丁に勝るものはないと思っています。
確かに、ステンレスは便利で、手入れも楽です。しかし、切れる、切れないの話で言えば、本当にいい職人さんの打った鋼の包丁は、包丁を食材に入れた時の感触が、全然違います。そして、この違いを知るにも多くの経験が必要となるのです。
うまく切られた料理は見た目もいい
さらに包丁を切れ味のいい状態にしておくには、常にきちんと研いで整えておかなくてはなりません。不思議なことに、料理人にとって切る技量と研ぐ技量は同じで、「切るのが上手だけど、研ぐのが下手」という人はほとんどいませんし、またその逆もしかりなのです。
そして、包丁さばきが上手な人が切った刺身は、きりっとした存在感があり、色ツヤもよく、見るからにおいしそうなたたずまいをしています。
しかし経験の少ない人が切った刺身は、身が沈んでいて勢いが感じられません。味も見た目に連動しています。
他にも、機械で作られた大根のツマと薄刃包丁できれいに薄くむかれた大根のツマでは、味に大きく違いがあるのを感じたことがある人も多いのではないでしょうか?
このように、「切る」といっても、奥深いものがあるのです。ただ単に切ればいいというわけではありません。切る技術と味は大きく関係しているのです。