一回一回手作業で調整し「仕上がり」を追求する
まずは試作品と食材や配合が似ている既存の商品を参考に、おおよその加熱時間のアタリをつける。そして、「標準機」と定めた電子レンジで温めてみる。その後、試作の改良とあわせて加熱時間の調整を5回程度繰り返す。
調整の結果、標準機における加熱時間が決まったら、さまざまな機種で微調整して最終決定する。過去に類似商品がない場合は、関係者が自宅の電子レンジを用いてテストすることもあるそうだ。
加熱時間は目安にすぎないはずだ。なぜ計算式などを用いないのか。なぜそこまで手間をかけて、適切な加熱時間を探っていくのだろうか。蟹沢さんは「似たような商品でも、食べてほしい温度によって加熱時間が変わります」と話す。
「今川焼(あずきあん)は温かい状態で召し上がっていただきたいので、加熱時間を40秒にしました。最低でも人肌以上の40度ぐらいにしたいからです。一方で、今川焼(クリームチーズ)は、冷たい状態で召し上がっていただく場合の加熱時間を20秒にしてあります。」
「また、お弁当用の商品の場合、調理から3~4時間後の実際に食べる時間にベストな状態になるよう、加熱時間や配合を個別に調整しています。アツアツまで加熱すると、食べるときに水分が抜けてパサパサになったり、コロッケのような商品では水分が衣に移行してサクサクとした食感が失われてしまうのです」
アナログな試行錯誤は「おいしさ」を追求するため
冷凍食品は便利さだけでなくおいしさも強く求められる。単に冷凍状態を解凍すればよいというものではないのである。調理後の「食べてほしい状態」と「実際に食べるタイミング」を考慮しなければ、加熱時間も決められない。
「『衣がサクサク牛肉コロッケ』と『たいめいけんカレーコロッケ』は、中に入っている水分量や衣の量などが違います。サクサクな衣に仕上がる時間を個別にテストした結果、10秒の差が出たと考えられます」
手作業のテストが必要な理由はほかにもある。電子レンジは同じ出力数でも機種により温まり方が異なる。例えばターンテーブルとフラットテーブルでも仕上がりが変わってくる。