レンジによって温まり方も変わる

ターンテーブルは庫内の横など一定の場所からマイクロ波を出し、テーブルを回転させることで食品にマイクロ波を均等に当てる。一方、機種によって違いはありますが、フラットテーブルはいろいろな場所からマイクロ波を出しているため、食材を回さなくても全体にマイクロ波が行き渡るようになっている。当然、マイクロ波が出る場所の違いによって食品の温まり方に差が出る。

さらに、メーカーや経年によっても食品の温まり方が変わってくる。こうなると計算式のようなもので一律に加熱時間を決めるのは非常に難しい。アナログな手法がとり続けられているのは、消費者の事情にあわせるためなのだ。

まだ疑問がある。家庭用電子レンジには700W以上の高出力が可能な機種もある。だが、ニチレイの商品パッケージには500Wと600Wの加熱時間しか表示されていない。なぜなのか。

「パッケージに高出力のワット数を記載していないのは、加熱ムラが起きやすいためです。確かに家庭用でも1000W、コンビニだと1500Wの電子レンジがあります。常温のものを温めるならそれほど加熱ムラは出ないでしょう。しかし冷凍状態から熱い温度まで一気に加熱するとなると話は別です。ある部分は冷たいままなのに、別の部分が焦げてしまうということが起きやすいのです」(蟹沢さん)

最も開発に苦労した商品は…

ニチレイフーズでも高出力での調理時間の議論はあるものの、加熱ムラの問題が解消されていないため、パッケージの表記は500Wと600Wに限っているいるそうだ。

それでは高出力のレンジしか使えない場合にはどうすればいいのか。

「700Wしか使えないときには、600Wでの加熱時間の7分の6を目安に様子を見ながら加熱してください。しかし、あくまでこれはざっくりとした目安です。パッケージ表記の出力と加熱時間で調理していただくのが、いちばんおいしくなります」(蟹沢さん)

加熱時間を検討する作業は、過去のノウハウ、工場ライン、市場のニーズなどの条件がそろえば、だいたい数日で決められるという。ただし、ときにはなかなか加熱時間を決められない商品も登場する。蟹沢さんは「冷やし中華の調整ではとても苦労しました」と話す。

「冷やし中華」とは3月1日発売予定の新商品で、「レンジで温めると冷たい麺ができあがる」という他に類を見ない冷凍食品だ。

冷やし中華
写真提供=ニチレイフーズ
冷やし中華

「電子レンジはマイクロ波が食品中の水分子を振動させることで熱を発生させます。ですが、氷は水分子同士が固く結びついていて、マイクロ波の影響を受けにくいため電子レンジでは溶けづらいんです。『冷やし中華』は温めることで麺が解凍され、氷が残ります。残った氷によって麺が冷やされるんです。われわれが知る限りでは、冷凍食品に氷が入った商品はなく、自社はもちろん他社商品にも参考になるものがありませんでした」(蟹沢さん)