手作業だからこその「おいしさ」がある
ニチレイフーズの「冷やし中華」には、自家製煮豚やきざみオクラなど4種の具材もついている。加熱時間の決定については全体のバランスを取るのに苦労したそうだ。
「麺や具の個別の加熱時間を調整するのはさほど難しくありません。ですが、レンジに1回かけるだけで麺と具材すべてにおいてベストな状態を作ることが非常に難しかったですね。加熱時間はもちろん、水分・氷・具材・麺の量そして氷の位置など、全方位に気を配って開発した商品です」(蟹沢さん)
「冷やし中華」の加熱時間は600W2分50秒。この時間を導き出すために重ねた試作は100回を超えたそうだ。こうした苦労を重ねた商品は大ヒットになるかもしれない。ニチレイフーズの定番商品「衣がサクサク牛肉コロッケ」も、1994年の発売当時は前例がなく、開発で苦労した商品だったからだ。
それまで冷凍コロッケの主流は油で揚げるタイプだった。しかし、お弁当のおかずにする消費者が多く、電子レンジ調理へのニーズが高まっていた。このときは前述の「冷やし中華」と同じく、適切な加熱時間を探るために試行錯誤を重ねたそうだ。その結果、「忙しい朝にも、サクサクのおいしいコロッケをお弁当に入れられる」として、大ヒットとなった。
実はニチレイフーズのパッケージには、加熱時間のほかに調理のワンポイントアドバイスも書かれている。「中身から加熱されますので衣が熱くならなくても出来上がり(カレーコロッケ)」「電子レンジ調理のあとにオーブントースターで加熱すると皮がカリっとさらにおいしい(今川焼)」などだ。
こうしたコツを書くことができるのは、開発陣がコツコツと調理試験を重ねているからこそ。ざっくりとした加熱時間を記すだけのメーカーとはひと味違う。そんな地道で細かな積み重ねが、冷食最大手の地位を下支えしているのだろう。