出会いやすい時代だからこそ、恋愛は難しい

また、孤独や人間関係の課題と言えば、恋愛に関しても、若い人たちは、とても苦労をしているようです。「自由恋愛」が当たり前になり、マッチングアプリが普及した現在、逆説的ですが、長期的なパートナーをなかなか持つことができないことに悩む若者が増えているといわれています。

つまり、マッチングアプリを使えば、簡単に出会えてしまうために、逆に誰か1人に決められないというパラドックスが起こっているのです。

昔であれば、学校や職場、地元などの限られたコミュニティ内での出会いが普通でした。誰かを選ぶ際にも、「まぁ、この人にしておくか。悪い人じゃなさそうだし」と、選択肢が少ない中で、妥協もありつつ、パートナーを決めていたと思うのです(周りの目もありますし)。

しかし、現在は選択肢が過剰に多く、せっかく出会えたとしても、相手の嫌なところが少しでも見つかると「もっと他にもいい人がいるし」と思い、すぐ次にいってしまうようになりました。自由であればあるほど、不自由になってしまうという矛盾があるんですね。

例えば、アメリカのコメディアンであるアジズ・アンサリのヒット作に「マスター・オブ・ゼロ」というネットフリックスのオリジナルドラマがあります。

2021年の現在、シーズン3まで公開されているのですが、シーズン1は、アジズ・アンサリらしい皮肉と悲哀を込めた「出会いの難しさ」をテーマにしたコメディ・ドラマになっています。主人公はマッチングアプリを延々とやり続けるけれども、ちょっと変わった子にばかり出会ってしまって、主人公が翻弄されていくというストーリーが展開します。

アジズ・アンサリはこの作品を通して、「出会いの機会が増え、自由になればなるほど、不自由になる」というパラドックスを描いているのです。

これは今、人と人との関係性や孤独を考える上で、とても重要な問いかけだと思います。アジズ・アンサリは、このドラマに関連して、なんと社会学者と協業して、現代の恋愛の難しさについて、書籍まで出版しています。

「なんで男ってこんなクズなメッセージを送ってくるんだろう」と一度でも思ったことのある人にはおすすめです。ひどい事例がたくさん紹介されていて、笑えるけど、笑えません。

ちなみに、アジズ・アンサリは、本作を通して「有害な男性性(トクシック・マスキュリニティ)」にとても敏感な態度をとったことで、評価をあげたのですが、当の本人がセクハラを行った疑惑が浮上し、一時期大きく批判をされてしまいました。本当にこういう事例が多いですね。