ジェンダー平等の取り組みはスタートからつまづいた
土屋では2020年に「ジェンダー平等委員会」を設置したが、取り組みはスタートからつまずいた。女性だけでメンバーを固めたことが原因だ。「男性社会の悪口を言うだけにならないか? ジェンダーイクオリティは女性だけが追求する価値ではない」と指摘されたのだ。男性も参加するように改め、再スタートを切ったのが「ジェンダーイクオリティ委員会」だ。
高浜社長はジェンダーイクオティのメリットを繰り返し説明してきた。
「さすがにジェンダーイクオリティを否定する社員はいません。ただ、個々の案件になると異論が出てくる。ここが問題です」
女性社員の昇進が提案されると、「納得しない男性社員がいるんじゃないか」とストップをかけられる。土屋にかぎらず、アファーマティブアクション(積極的格差是正)は、逆差別だという指摘は聞かれる。
「何もしないと、組織はどうしても男性の価値観で動いてしまう。女性を積極的に登用し、組織のカルチャーを変化させるしか方法はないと思います」(高浜社長)
男性だけが進めるビジネスの危険性
高浜社長にとって、ジェンダーイクオリティは企業イメージやブランドへの影響とは別の価値がある。経営の意思決定が違ってくるのだ。
「男性は自分も含めて気づきが薄いというか、問題・課題に気づかないで前進するところがあります。男性スタッフの助言は、たいてい私が想定した範囲。一方で女性の中には、別の角度から問題・課題が見えていて私の見落としを指摘してくれるスタッフが多くいます。たとえば、土屋の経営においても組織が急拡大する過程ではいくつもの事業や商材の提案(中にはペテン師まがいのものも)が、あらゆるところからやってくる。そんな時に男性メンバーはいいところばかり見がちなんです。一方で長尾さんなんかは非言語情報を読み取って、違和感(なんか怪しい、信用できないなど)を進言してくれる。
実際に長尾さんの言う通りにして助かったことが何度もあります。ふとした時の表情や非意味・非言語の情報の読み取りの力が違うと感じています。一方で、情報をとり過ぎ、リスクヘッジしすぎてしまう傾向もあるためバランス、補完性が重要です」
一点のゴールをめざして突っ走るタイプの人は、とくに売上目標を達成するような“量の追求”は得意だ。手段やプロセスは二の次になりやすい。
一方、プロセスに潜む複合的な問題・課題に気づくタイプは、働く環境を整備するような“質の追求”が得意だ。
「あくまで傾向ですから、個人差はあります。企業活動は“量の追求”と“質の追求”が両輪ですから、それぞれの強みを発揮できる組織が強いと思います」