Step2(図表2)では、物理的制約(時間や文字量)のために、1つに絞ることを相手に伝えます。膨大な情報の中から1つに絞って抜き出す、つまり抜粋して伝えることを宣言するのです。

【図表2】Step2 その中から1つ抜き出すことを宣言する
イラスト=長野美里

「時間の都合上、●●だけに絞ってお伝えします」、「ページ数が多くなってしまうので、1点のみ抜き出してお伝えします」のようなフレーズを使うとわかりやすいでしょう。

Step3(図表3)では、「なぜ、その1つに絞ったのか?」、その理由を伝えます。

【図表3】Step3 その1つを抜き出した理由を伝える
イラスト=長野美里

全情報の中からその部分を抜き出した理由を、相手が納得するように伝えます。抜き出したのには何か理由があるはずです。「他の情報は忘れてもらって構わないから、最低限この部分だけは相手に覚えておいてほしい」、そういった絞った正当性をしっかりアピールします。前置きとして、「最も」をつけると効果的です。

たとえば、「この●●は、全テーマの中でも最も重要なトピックだからです」、「なぜなら、この●●は最も使用頻度が高いためです」、「この●●だけは知っておかないとリスクが高まります」のようなフレーズです。

抜き出したものの正当性を強調するのです。Step2の後にこのようなフレーズを入れることで、情報をカットされたことに対して相手が抱くかもしれない不満を防ぐことができます。

それと同時に、抜き出したその1つの価値を高めることにもつながります。結果的に相手は、「情報を絞ってもらえて得した!」、「情報過多にならずに済みそう!」と思ってくれるのです。

話を組み立てていくこのステップを、私は「抜粋の型」と呼んでいます。

実際に、この「抜粋」の型を使った具体例を紹介します。

なぜ「要約」より「抜粋」が簡単なのか

自分が読んだWeb記事の内容を、誰か他の人に紹介することを想定します。そのときには以下のように話していくのはどうでしょうか。

Step1 この●●(タイトル)という記事、面白かったんだけど、ぜんぶ読もうとすると、5分くらいかかってしまいそうなんだよね。
Step2 今、忙しいだろうから、その中で一番面白かったところに絞って話すね。
Step3 その部分って、■■さんにすぐに役立ちそうだからさ!

このような前置きを入れた後に、「その絞った1つというのが、……」のように展開していくことで、相手にとっては非常に価値のある話となっていきます。