共食い懸念や利用者伸び悩みは課題
もっとも、みんなの銀行には、福岡銀行などグループ内の既存銀行と顧客を取り合うことになる共食い懸念(カニバリゼーション)や、足元では、口座数や利用者数が当初の計画通りには伸びていないといった問題もある。
異業種のネット銀行や多くの地銀では、「お手並み拝見」とみんなの銀行の取り組みを冷ややかに見る向きもゼロではないだろう。欠点や問題点を挙げるのは簡単だ。しかしみんなの銀行のすごさは、実際に開業し、すでに稼働していることだ。メガバンクや地銀が最も苦手としてきた「まず行動してみる」「走りながら考え修正する」という経営ができているのだ。顧客目線と収益目線を持ち、いち早くデジタル銀行の設立まで実現させた構想力と実行力はさすがトップ地銀といえよう。
地銀DXに取り組む「iBank事業」
ふくおかFGの中核行である福岡銀行は、広島銀行と地銀初の勘定系システム共同化に踏み切るなど、以前から情報技術分野への投資や開発には積極的であった。現在も、中小企業などを対象にしたオンラインレンディング「フィンディ」を導入するなどデジタル金融の先駆者でもある。
また、みんなの銀行の永吉副頭取がファウンダーでもある、子会社のiBankマーケティング(代表者、明石俊彦、内田一博)は、スマホ専用アプリ「Wallet+」と非金融サービスなどを展開する「iBank事業」を手掛けている。これにはふくおかFGの傘下3行に加え、沖縄銀行、広島銀行、山梨中央銀行、南都銀行、十六銀行、佐賀銀行が賛同して稼働中であり、八十二銀行、阿波銀行、北日本銀行が参画予定など、全国規模で地銀DXを加速させる存在となっている。
GAFAの強みを取り入れた経営
みんなの銀行の特徴は、自前のエンジニアによる自社開発、サブスク型プレミアムサービスの提供、ローン商品の導入予定といった形で、GAFAのように①デジタル化、②サブスク化、③拡張化に注力することで、安定的な収益の確保とその拡大を目指している点だ。
GAFAは、多彩な人材を採用し、最先端のデジタル技術を用いた商品やサービスにより顧客を惹きつけ、定額サービスなどサブスク化により顧客を囲い込み、既存サービスのアップデートや新商品などの提供により拡張を続ける、といったビジネスモデルで躍進してきた。まさにみんなの銀行もGAFAの強みを取り入れているのだ。
これまでの地銀では実現しないようなデジタル化、サブスク化、拡張化によって「ワクワクする」→「使いたい」→「利用者の増加」→「手数料など増加」→「収益力アップ」→「さらなる拡張・投資」という好循環の実現を目指している。この先、消費者ローンや銀行システム提供事業などが加わり、業容が順調に拡大していけば、みんなの銀行の将来的な株式市場への上場、スピンオフやスピンアウトも期待できるのかもしれない。