これから地銀はどうなるのか。金融アナリストの高橋克英さんは「現状維持ではGAFAなどの“下請け”となってしまう日も遠くない。地銀にはスマホ銀行化か大手企業の傘下に入り、グループの銀行部門として生き残るかの判断が求められている」という――。
GAFAとコイン
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パーカーにジーンズ姿で働く銀行員たち

福岡の中心地にある「みんなの銀行」(横田浩二頭取)のオフィスは、コーポレートカラーでもある黒を基調としたスタイリッシュなデザイナーズオフィスだ。永吉健一副頭取はじめ、オフィスで働くメンバーが、濃紺スーツにネクタイ姿ではなく、パーカーにジーンズといったカジュアルなスタイルで働く光景を見て、ここが銀行オフィスとは誰も思わないだろう。

みんなの銀行では、海外の大学院や地元の九州大学などで最先端の研究に取り組んできたデータサイエンティストや、デジタル企業の第一線で活躍した経験を持つエンジニアやデザイナーなどを積極的に採用している。こうした「金融業界の枠外」の多彩なデジタル人材と銀行業務を知り尽くしたエキスパートが融合して、日本初のスマホ完結のデジタル銀行を運営しているのだ。

ふくおかFGが設立したスマホ銀行「みんなの銀行」

福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行を傘下にもつ、ふくおかフィナンシャルグループ(柴戸隆成会長兼社長、以下ふくおかFG)は、総資産28.7兆円を誇る日本最大の地銀である。そのふくおかFGが2021年5月、日本全国のデジタルネイティブ世代をターゲットにしたスマホ完結のデジタル銀行「みんなの銀行」のサービスを開始した。

モノトーンに黄色をアクセントカラーにしたみんなの銀行のアプリデザインは、実にスタイリッシュだ。今までの銀行にはないワクワク感があり、イケている印象がある。実際、世界3大デザイン賞の一つである「Red Dot Design Award 2021」で3部門受賞、世界の銀行・保険会社のイノベーションを顕彰する「Efma-Accenture Banking Innovation Awards 2021」で日本企業初の金賞受賞など、日本国内よりもむしろ海外で先行して高い評価を獲得している。

アプリの操作性はシンプルかつミニマルだ。スマホで操作して10分程度で、開設した口座を利用でき、預金の目的別管理や他の金融機関の口座を含めた資産管理が可能になる。説明や注意書きがごちゃごちゃあり、何度もタップが必要な既存の銀行のアプリやサイトとは大違いだ。これは、システム開発子会社のゼロバンク・デザインファクトリーが、顧客目線に立ち、自社開発した勘定系システムを、Googleのクラウドサービス「Google Cloud」上で構築している点も影響していよう。

こうした斬新なデザインと直線的な操作性によるスマホ上でのサービスを武器に、みんなの銀行では、初年度は顧客数40万人、預金250億円、3年目には120万口座、預金2200億円、消費性ローン800億円を獲得し、単年度黒字化を目指すという。