東京きらぼしFGもスマホ銀行に参入

ふくおかFGに続き、きらぼし銀行を擁する東京きらぼしフィナンシャルグループ(渡邊壽信社長)も2022年1月にスマホ銀行「UI銀行」(田中俊和社長)を開業した。

預金や振り込みなどはスマホ上のUI銀行で行い、資産運用などコンサルティングは、きらぼし銀行の店舗などでできるようにすることで、対面・非対面のハイブリッド体制を目指すという。UI銀行ではきらぼし銀行からの口座異動を主に、口座獲得を目指すという。韓国のSBJ銀行の開発によるクラウドを活用した勘定系システムを採用し、管理コストを削減することで、魅力ある預金金利設定を可能としている。

スマホを操作する男性
写真=iStock.com/PeopleImages
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まずは開業記念キャンペーンとして、2022年3月末までの期間限定で、1~2年ものの円建て定期預金に年0.3%の金利を設定している。ちなみに、きらぼし銀行の定期預金金利は、預入期間に関わらず年0.002%だ(2022年2月1日現在)。

ターゲットとする顧客層、基幹システムの利用や親銀行との協働など、みんなの銀行とUI銀行の方向性は違うものの、①デジタル化、②サブスク化、③拡張化を意識した地銀発「スマホ銀行」設立の動きは、過去の延長ではない、未来の銀行像を目指したチャレンジとして、注目に値しよう。

三重苦とネット銀行の台頭で苦戦する地銀

こうした地銀発スマホ銀行の設立の動きがある一方、地銀再編、地銀衰退、地銀崩壊、地銀消滅などと、地銀の苦戦が伝えられている。①人口減少、②低金利、③デジタル化、という三重苦が、地銀の3大ビジネスである①貸出、②手数料、③有価証券運用ビジネスを疲弊させているのだ。

特に、個人向けビジネスでは、楽天銀行やSBI証券といったネット銀行やネット証券会社がその利便性や手数料の安さなどから、デジタルネイティブ世代だけでなく、30代から50代のミドル世代、そしてシニア世代に至るまで幅広い層で利用されるようになっており、相対的に地銀は顧客基盤と収益機会を失っている。地銀ビジネス不振の根本原因に「顧客目線と収益目線の欠如」を指摘する声もある。

ペイロールとスーパーアプリの脅威

さらにこの先、地銀ビジネスに悪影響を与えそうなのが、「ペイロール」と「スーパーアプリ」だ。政府は、給与のデジタル払い(ペイロール)を解禁する方針で、実現すれば、従来は現金か銀行口座への振り込みだった給与を、スマホアプリ上で電子マネーとして受け取り、そのままスマホで決済できるようになる。個人の給与振込口座を押さえることで、住宅ローンや資産運用の提案につなげてきた銀行にとっては、深刻な打撃となる。

また、金融サービス仲介業の創設によって「スーパーアプリ」として、預金、送金、ローン、資産運用、保険などの取引をスマホ上でできることになった。すでに、国内総利用者数3億超のZホールディングスは、LINE、Yahoo! JAPAN、PayPayなどを事実上の「スーパーアプリ」として強化し独自のデジタル経済圏を構築しつつある。