豚カツ、ジビエで怖いのはE型肝炎
豚肉は、主に問題となるのがE型肝炎、ウイルス旋毛虫(トリヒナ)、トキソプラズマなどの寄生虫、細菌のカンピロバクターやサルモネラ属菌です。
とりわけ問題なのはE型肝炎。豚のほか、イノシシやシカも保有していいます。感染者の1~3%は死亡するとされ、国内ではイノシシの生レバーを食べて死亡した例があります。ハンターが狩猟したシカ肉をグループで生食し発症した事例も報告されています。
E型肝炎は、潜伏期間が2~9週間とかなり長いため発症しても感染源を突き止めにくいという特徴があり、E型肝炎の発症者の半数は原因がわかりません。
寄生虫やウイルスは、菌と異なりその個体が生きている時から肉の内部にいます。そのため、肉の表面加熱では不活化しません。豚肉・豚レバーについては食品衛生法により、生食としての提供や販売は禁止されています。豚肉や内臓、ジビエは、中心部まで75℃1分間、70℃3分間、あるいは63℃30分間の加熱が行われていれば安全ですので、家庭での調理もこの条件を守るべきです。
中がピンク色の豚カツは安全なのか?
ただし、これも意外に簡単ではありません。食品安全委員会の調査事業で、厚さ1cm、室温の肉を180℃の油で揚げる「豚カツ」の加熱条件を探っています。揚げ時間1.5分や2分では中心部の温度が十分には上がりませんでした。2.5分揚げると中心部が75℃1分間や70℃3分間の加熱条件を満たしました。
よく、揚げ色や切った時の断面の色で加熱できていることを確認すると言いますが、豚カツの外見や断面では区別できないこともわかりました。揚げ時間1.5分の豚カツは、揚げた直後の断面はピンク色だったのがしばらくすると余熱で白くなりました。温度を測定すると、揚げた直後の温度は平均41℃。余熱によりこれが平均65.3℃まで上昇しました。しかし、この温度であれば30分近く維持しなければ菌やウイルスの不活化には至りません。余熱ではこの温度を長く維持できず、つまりは揚げ時間1.5分では安全を守れません。
最近、豚カツ店の中に豚肉の内部が生のピンク色に近い状態のものを提供するところがあります。内部温度をきちんと測定して安全確保しているのでしょうか?
豚肉の低温調理も流行していて、中がピンク色のチャーシューを見かけます。食品安全委員会が実際に低温調理で作ってみたところ、豚肩ロース肉650g、厚さ約6cmの塊肉を63℃の湯につけ中心部が63℃まで上がるのに3時間40分かかりました。加熱条件は63℃の場合30分間の維持が必要なので、チャーシュー完成までに4時間10分もかかることになります。ピンク色のチャーシューがこの加熱条件を満たすのかどうかも気になります。