「コツ」「ツボ」「注意点」を重視する
選手に教える際、とくに技術的指導をするときに、私は次の3点を身につけさせることを重視していた。すなわち、「コツ」「ツボ」「注意点」である。
「コツ」とは、投げる、打つ、守る、走るときの感覚。「ツボ」とは、相手チームのタイプ、配球の傾向やクセ、気をつけるべき、もしくは狙うべき球種、マークすべき選手とその攻略法など。そして「注意点」とは、意識づけておくべきこと、これだけは絶対にやってはいけないこと、気をつけるべきポイントといったことをいう。
これらを教え込む際には、自分の経験を話してやるのがいい。ただし、「おれがやったとおりにやれ」と命じるのは禁物だ。自慢話や昔話を延々と聞かされることほど退屈なことはないからだ。私自身、若いころはそうだったからよくわかる。
教える内容は同じでも、時代と相手に応じて伝え方を変えなければならない。自分の経験をただそのまま話すのではなく、その中にある普遍的なエッセンス、時代が変わっても通用する技術や知恵などを抽出し、いまの人たちにも通じるようアレンジして伝えることが必要だ。そのうえで、「君の場合はこうしたらどうだ?」とアドバイスしてやることが肝心である。
教えるべきは「どうすれば直るのか」
もうひとつ重要なのは、具体的、実践的なアドバイスをしてやることだ。
コーチの中には、「肩が開いている」「軸足が残っていない」などと欠点を指摘するのを教えることだと勘違いしている者も少なくない。しかし、その程度のことは、ビデオを見れば選手本人にだってわかる。
彼らが教えてほしいのは、「どうすれば直るのか」ということだ。欠点を矯正するための具体的かつ実践的な方法なのである。