なぜロシア周辺国が相次いでNATOに参加しているのか
「基本指針」の合意後の1999年にハンガリー、ポーランド、チェコがNATOに加盟したのを皮切りに、2004年にバルト3国をはじめとしてルーマニア、スロバキア、スロベニア、ブルガリアの7カ国が加入した。
ロシア周辺国が相次いでNATOに加盟しているのは、ロシアに向けて勢力拡大したいという考えではなく、ロシアの脅威を前に自国の安全を守るためにNATO軍の支援を必要としたのだ。いわば苦肉の策といえる。
2008年には、ウクライナとジョージア(旧名はグルジア)がNATO加盟を申請した。だが、同年にロシアがジョージア国内の民族紛争に軍事介入している。この2カ国の加盟を頑として認めていない。
「アメリカがわたしたちをだました」
ロシア側の言い分はこうだ。昨年12月23日の恒例記者会見の場で、プーチン氏はNATOをめぐるアメリカへの不満を爆発させている。
「アメリカがやっていることは、まったく理解できない。わたしたちが、アメリカとの国境近くにミサイルを配備したことがあるのか。『ない』に決まっている。それなのにアメリカは、わが国をミサイルで攻撃し、侵略しようとしている。すでに敷居を跨ごうとしている」
プーチン氏が神経質になっているのも理解はできる。アメリカがウクライナのロシア国境付近に超音速兵器を配備するかもしれないからだ。「5分でモスクワに到達可能であり、ロシアは壊滅的な事態に陥る」とプーチン氏は声を荒らげる。NATOの「基本方針」は守られておらず、まさに「ロシアのレッドライン」超えると息巻く。さらに、
「アメリカは、わたしたちをだました。ずうずうしいにもほどがある。NATOの地対空ミサイルシステムが、ルーマニアとポーランドにも配備されている。わたしたちは、『迫ってくるな。アメリカは、わたしたちにNATO不拡大を約束した』と何度も忠告した。
すると、アメリカはこう返答してくる。『どんな文書にそんな約束が記されているのか。勝手に心配するがいい』って開き直る」
アメリカ不信の根源にある1990年の出来事
どうやらプーチン氏の怒りには、アメリカに裏切られたという恨みがある。
その「裏切り」について、BBCが詳しく報じている。記事のタイトは、「NATOの拡大:果たして西側はゴルバチョフをだましたのか」(2017年12月26日)。
アメリカのジョージ・ワシントン大学に設置されている「国家安全保障文書館」の資料によれば、1990年に東西ドイツが統合した際、当時のゴルバチョフ・ソ連邦大統領を相手にジェイムズ・ベイカー・アメリカ国務長官をはじめとする外交官たちが、こう口頭で約束したと記されている。「NATOは、ドイツの国境線を超えて東方拡大することはない」。
BBCの解説記事はこうだ。「プーチン政権はNATOの東方拡大の動きを牽制するために、27年前のアメリカ高官たちの約束を持ち出してきた。だが西側は、ゴルバチョフと書面で約束したわけではない。NATO東方拡大を、だれも止めることはできない」。