プーチンの野望の正体

バイデン氏は当面、ロシアに明確な返答を先延ばしにする戦法のようだが、プーチン氏は「即時に、いや今すぐに回答せよ」といら立つ姿勢を見せる。

ロシアの容赦ない圧力にさらされるバイデン氏が、不調和が続くNATOに不信感を募らせ、NATOからの撤退を模索するかもしれない。中東、アフガニスタンからアメリカ軍が撤退したようにヨーロッパからも、という流れである。

その先に、プーチン氏の野望が見え隠れする。主導権を握ってきたアメリカの不在でNATOは弱体化し、伝統的な同盟を形成してきた「欧米」が引き離される。

NATOを統率するリーダーがいなくなれば、プーチン氏が崩壊寸前のNATOを乗っ取る秘策を打ち出すかもしれない。

実はNATO第10代事務総長(1999~2004年)を務めたジョージ・ロバートソン氏はアメリカの雑誌『フォーリン・ポリシー』(1月22日付)に、2002年にプーチン氏がロシアのNATO参加の構想を語り、加盟国を驚かせたと証言している。

当時は冗談のように思えたようだが、今となればプーチン氏は真剣に野望を語っていたかもしれない。そうなれば、「欧露」という異次元の同盟が誕生する。欧米はいまや、「恐ロシア」の陰謀で重大な危機に直面しているのである。

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