5年前と今回の金塊詐欺金の共通点・相違点

実は、この金塊詐欺は以前にもありました。約5年前にも、手口は若干違っているものの複数件、発生していました。

その時も、息子などの身内をかたった「オレオレ詐欺犯」からの電話がきっかけでした。

息子になりすました男は「かばんをなくした」と言い、「実は、そのなかに仕事の重要な契約書類が入っていた」と畳みかけます。そして「今日中に、支払い先へのお金を立て替えなければならないので、貸してほしい」と言います。

ここまでは定番のだましの手口ですが、ここからが違いました。

当時も、振り込め詐欺への警戒はかなり強まっていました。もしここで高齢者を銀行に行かせて、多額のお金を引き出させたとすれば、銀行側が「詐欺」を疑うことは間違いありません。そこで詐欺グループは一計を案じて、次のような手を打ってきました。

「銀行口座から、一度にたくさんのお金を下ろせないから、金(金塊)をまず買ってほしい」

そう高齢者に話したのです。都内に住む70代女性は、なりすました人物から指示された金の販売会社の銀行口座に5000万円以上を振り込みます。おそらく窓口でお金を引き出して振り込みを行ったと考えられますが、なぜ、容易にそれができてしまったのでしょうか。それは、この販売会社が詐欺グループとは何の関係もなかったと思われるからです。一般の会社との正規の取引であれば、よもや銀行もその背後に詐欺グループがいるとは想像もしなかったことでしょう。それに、資産防衛や投資目的のために、値上がりが期待できる金を購入する高齢者は少なくありません。

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写真=iStock.com/farakos
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その後、金の延べ板12本が自宅に届けられます。その頃を見計らって、詐欺グループは、「支払い先へのお金を払わないとクビになる」といった口実で高齢者を無理やり説得した宅配バイク便の業者を向かわせて、金塊をまんまとだまし取ることに成功したのです(その後、金の買い取り業者に転売したと思われる)。

当時、他にも同様の手口による被害者もいますが、やはり数百、数千万円の高額な被害になっています。

銀行側でも高額な引き出しであれば、詐欺との疑いを持てるでしょうが、このような金の購入をして、金品をだまし取る手口は知られておらず、しかも一般の会社へ正規の取り引き(振り込み)となれば、詐欺とは気づかなかったのも致し方ないといえます。まさに虚を衝く手口でした。