なぜ、資産状況をべらべら第三者にしゃべってしまったのか

今年に入って続発する金塊詐欺も、5年前に被害に遭った人たちと同じように「カバンをなくした」という電話がきっかけでした。しかし5年前と違う点は、タンス預金に何があるか、資産状況を聞き出したうえで、自宅にある金塊を持ち去る方法に変えてきていることです。

冒頭で触れた、1月上旬に現金60万円と3000万円相当の計4個の金塊を詐取された都内在住の80代女性。港区・麻布署によると、息子を名乗る男は「印鑑などが入ったかばんをなくしてしまい、お金をおろせないんだ」と言い、さらに「お金を貸してほしい」といった話をしてきたそうです。高齢女性は、その話を信じて「家に金の延べ棒がある」ことも伝えてしまいました。しかも、男は息子の名前だけでなく、職業についても知っており、それで女性も真実だと思ってしまったのでしょう。

これまで詐欺犯らがだまし取るものといえば、現金やキャッシュカードでしたが、そこに金塊も加わったといえます。

積み上げられたゴールドバー
写真=iStock.com/scanrail
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その背景には、コロナ禍で金の価格が上昇し、それを購入する高齢者が増えたこと。さらに、詐欺グループも、金を高値で転売することができる状況があると踏んでの犯行ではないかと思われます。

歴史的にみて、詐欺は既存の手口に新たなものを加えアレンジしながら、常に“進化”しています。今回の手口も「カバンをなくした」という電話をかける従来のオレオレ詐欺をベースに「金塊詐取」というひねり技を混ぜて再登場させたということでしょう。

それにしても「なぜ古典的ともいえるオレオレ詐欺の手口でだまされてしまうのか」「なぜ資産状況をべらべら他人にしゃべったのか」と疑問に思う方が多いでしょう。