成功の条件は「頭のよさ」以外のところにある
以前のことだが、さまざまな業界で大きな成果を挙げている経営者十五人と、立て続けにそれぞれ一対一で食事をする機会があった。それによってあらためて、これまでの考えが間違っていなかったことを確認したのである。
十五人に共通していたのは、人一倍働くことを苦にしない。そして個性が強く、どちらかというと奇人・変人タイプ。そのうえ人が大好きで、時間があれば人と会っている、という三点だった。
そして、いずれの人も食べるのが早く、残さずに全部平らげていた。つまり、早飯なのだ。やはり早飯は成功の条件に違いないと、意を強くしたのである。
この十五人の経営者の特徴をみてもわかるように、実社会で成果を挙げていく人の条件は、いわゆる世間でいわれるような頭のよさだけではない。
私のこれまでの経験からしても、またこれまで入社した社員たちのデータをとってみても、仕事の優秀さは、卒業した学校のブランドや、そこでの成績ともまったくといっていいほど相関関係がなかった。
「パチンコなら誰にも負けない」男子大学生を採用したワケ
たとえば、こんなこともあった。先に述べたとおり新卒採用をするべく各大学に求人票を出したものの一人も集まらなかったのだが、その後、新聞に求人広告を打ったところ、六人の学生が応募してきた。
そのうちの一人が、「パチンコなら誰にも負けない」という。聞けば大学の四年間、毎日パチンコに明け暮れ、月に十万円ほども稼いでいたそうだ。
私はそこで、「パチンコについて作文を書いてこい」という宿題を出した。原稿用紙二十五枚にわたって彼が書いてきた作文を読んで、私は舌を巻いた。
パチンコのどんな台を選ぶべきか、釘の角度はどのぐらいがよいか、どんなコンディションでどうパチンコに臨むべきか、実に細かく考察がなされている。
大学の成績は惨憺たるものだったが、私は思い切って彼を採用することにした。はたして入社してから彼は大きな成果を収め、幹部として会社を支えてくれる人材に成長した。そして、レポートを書かせると群を抜いてうまい。
彼を採用したのは、その鋭い観察分析力と、学費をパチンコで稼ぐという気概、それから作文の巧みなことからだったが、学業の成績よりも「これだけは人に負けない」という何かをもっている人のほうが、いい仕事をするというよい例ではないかと思う。