これからはEQの高さが求められる
これまでの日本社会では、どちらかといえば偏差値の高い高学歴の人材が重用されてきた。しかし、グローバル社会の到来とともに、その流れは根底から崩れ去っている。IQ(知能指数)値によって表される優秀さよりも、EQ(感情指数)値の高さが求められるようになってきたのだ。
EQの高さとはどういうものか。人間としての総合的な知性と感性の豊かさ――すなわち、どんなに苦しくとも己を励まし、情熱・熱意・執念で困難に立ち向かう能力。他人の苦しみを深く読み取り、人心を束ねる能力。また、いかなる風雪にも耐え得る強い心ともいえる。
もちろん、それらは一朝一夕に身につくものではない。しかし、筋肉と同様、鍛えれば鍛えるほど、どんどん伸ばせるのがEQだ。
IQは、もって生まれたものが大部分だが、EQは努力次第でとてつもない差がついてくる。自分の進む方向をしっかりと見据えて努力を重ねれば、誰もが一番になれる時代が到来したのだ。
また、AI(人工知能)時代の到来で、EQ値が高い人材への期待は、ますます高まっていくだろう。AIやロボットの登場で、人が行っている仕事の約半数は取って代わられるという。その場合、人間にしかできない仕事の特徴として挙げられているのが、創造性や共感性、それに非定型性だ。
高度に複雑化した社会では、他者への共感や理解、説得や交渉といった、複雑で臨機応変な対応が求められる場面が増えてくる。これこそ、まさにEQが本領を発揮する分野といえる。
AIだけで物事が決まっていくと、社会は砂漠の中で暮らしているような殺伐とした雰囲気に覆われる。そこに潤いを与えてくれるのが、EQの力だ。どのような社会にあっても、泣いたり、笑ったりする人間の喜怒哀楽をおろそかにしてはならない。
人間としての器を大きくする、こんな方法
それでは、EQを高めるために大切なこととは何だろうか。まず成功体験をもつことである。自ら計画した仕事をやりとげたとき、人は身が震えるほどの感動を味わう。そうした体験の積み重ねがEQを高めることにつながってくるのだ。
そしてもう一つは、苦しみを乗り越えることである。いくら目標を達成しても、それが誰でもクリアできる低いハードルだったら、感動など湧いてこない。高いハードルを前に、逆境に苦しみながらもそれを乗り越えたときにこそ、深い喜びが味わえるものだ。そうした体験の積み重ねが、感性を磨くことにつながるのだ。