解除に際して、本当にこの基準が機械的に適用されるのであれば、かつてのようななし崩し的な延長もないはずであり、予測可能性は高まっているという望みもある。
とはいえ、過去2年間で散見された無理筋な意思決定を振り返ると「総合的」や「臨機応変」などのワーディングと共に解除を渋る懸念も頭をよぎる。繰り返しになるが、世論の支持がある以上、政治はどうしてもそれになびきやすい。
行動規制で進んだ外国人投資家の日本離れ
問題は、そうした「コロナ対策>経済正常化」という政策姿勢に関し、世論は支持しても金融市場は支持していないという事実である。
根拠薄弱な行動規制と共に過剰貯蓄を積み上げる日本経済に投資する理由は乏しく、実際、行動規制が慢性化し始めた昨年4月以降、外国人投資家の日本株買いが見られなくなっている(図表2)。
日経平均株価が世界の潮流についていけなくなったのもやはり昨年4月以降だ(図表3)。4月に3回目の緊急事態宣言が発出され、以後延長が繰り返されてきたことと無関係とは言えないだろう。
なお、ドル安が進んでも円高にならない最近の為替市場の背景には、こうした株式投資を巡るフローも関係しているように感じる。
「市場の声」は首相の耳に届くのか
こうした日本を避けて通ろうとする「市場の声」が「聞く力」を自負する岸田首相に届くのかどうか。
株や為替の動きが日本経済に与えるダメージがクローズアップされてくれば、「やり過ぎの方がまし」という現在のコロナ対策の基本姿勢も修正される余地はあるだろう。
しかし、一度経済から退場した企業や個人が再び復活するには長い時間がかかる。それは日本の潜在成長率低下としていずれ表面化する話である。
不可逆的なダメージをこれ以上広げないために、成長重視の路線に舵を切ることが望まれるだろう。それがコロナ禍で耐え難い犠牲を強いられた若年世代を念頭に置いた政策運営にもなるはずである。