環境先進国日本のこの体たらく
日本は京都議定書にもとづいて、2008~2012年(第1約束期間)に、1990年比6パーセントの温室効果ガス削減を義務づけられている。しかし、2006年の時点で逆に6パーセント増加しており、足りない分は海外から排出権を購入して穴埋めしなくてはならない。第1約束期間の5年間分で、日本は2億1千万~2億8千万トンの排出権購入が必要になると言われ、昨年10月には財務省が、財政制度等審議会の配布資料の中で、排出権購入のための財政負担が最大で1兆2千億円になるという試算を示している。しかし、将来、排出権価格が上昇すれば、1兆2千億円ではすまなくなる可能性もある。
一方、国連に登録ずみの中国のCDMプロジェクトから生じる排出権の量は、年間1億1347万トンである。1トン3500円で計算すると、年間3971億円の「月餅」が空から降ってくることになる。京都議定書では、中国やインドといった中進国・途上国には温室効果ガス削減義務が課されていないので、二酸化炭素などを垂れ流しながら、CDMをどんどんやることができる。
日本の製鉄メーカーなどがこれまで血の滲むような努力でリストラを行ったおかげで、日本は世界最高のエネルギー効率を持ち、その分、温室効果ガスの排出も抑えられている。しかるに、莫大な財政負担を強いられ、中国に月餅を差し上げる格好になっているのは、何かおかしくはないだろうか? 調印してしまった第1約束期間についてはどうしようもないが、2013年以降の「ポスト京都議定書」については、これ以上日本にとって不利な取り決めをしないでもらいたいという声は圧倒的に多い。
(黒木 亮=撮影)