排出権ビジネス成功のカギは……

日本においてCDMプロジェクトを活発に手がけているのは三菱商事や丸紅などの総合商社である。三菱商事がネットワークを生かして、世界中で次々とN2Oプロジェクトを手がけた話は有名だ。金融機関では、三菱UFJ証券が比較的小規模のプロジェクトをこまめに拾い上げ、ノウハウを蓄積している。また大和証券SMBCや三井住友銀行、日本スマートエナジーなども積極的だ。

排出権の買い手としては、電力会社や製鉄会社、航空会社のほか、電力会社・商社・メーカー・政府系金融機関等が出資する日本カーボンファイナンスなどがあり、仲介業者としてはナットソース・ジャパンがよく知られている。また、国際協力銀行やジェトロ(日本貿易振興機構)は、制度作りや民間企業へのアドバイスを積極的に行っている。

CDMプロジェクトは、普通のプロジェクトに排出権という要素が付け加えられたものであるため、実施にあたっては、(1)プロジェクト一般に共通する問題と、(2)排出権特有の問題がある。

プロジェクト一般に共通する問題としては、たとえば中国では、契約の交渉でいったん合意しても、あとで蒸し返されるとか、相手側が契約内容が気にくわなくなって裁判を起こし、中国側に有利な判決を下されるとか、政府の各種許可を取るのに時間がかかる、あるいはプロジェクト実施に必要な地元のインフラストラクチャー(社会資本)が整っていない、プロジェクトを立ち上げるための資金の調達に苦労する、といったことである。

風力発電事業を手がけるホニトン・エナジーのポール・エヴァレイ氏。
風力発電事業を手がけるホニトン・エナジーのポール・エヴァレイ氏。