ぼくが毎月、強行日程を組んでまで海外へ出かけるのも、行動しながら考えるためだ。考えるために行動するといってもいい。アメリカの著名な投資家ジョージ・ソロスも、途上国の貧困問題と取り組む世界的な経済学者ジェフリー・サックスも、自分の足で歩いて集めた情報をもとに判断するという。
ぼくも楽天市場を立ち上げたころ、自分で全国の中小商店のもとに出向いて、営業した。当時、インターネットショッピングモールは先に参入した大企業がどこも苦戦していたため、「うまくいくはずがない」と否定論ばかりだった。実際、創業時の出店数はわずか13店舗。スタッフ総勢6人で全国を回って一カ月に5店舗を獲得するのがやっとだった。
それでも各地の商店を見て回り、店主の話を聞きながら、インターネットショッピングなら地方の中小商店も元気づけられると感じた。そして、どうすれば自分たちの提供するサービスがもっとよくなるか、何か新しいことはないかとアイデアが次々浮かんだ。
行動すれば、頭の中の漠とした感覚が確信に変わる。確信に変われば人を説得できる。こうして行動するなかで「世界一のインターネット・サービス企業」という大きな目標が見えてきたのだった。
今回の海外出張でも、楽天のモデルがヨーロッパでも通用することに確信が持てたことで、ヨーロッパ進出という新しい目標が明確になった。