岸田政権が誕生してから、国会では与党が不祥事を認めて謝罪し、野党の追及にも真摯に応じる場面が増えた。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「2021年は野党が選挙で猛追を見せた年だった。自民党が2022年の参院選に危機感を持っている証左だ」という――。
新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、政府が全世帯へ配布した布マスク。総額466億円に上る税金が投入される(東京都)
写真=時事通信フォト
新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、政府が全世帯へ配布した布マスク。総額466億円に上る税金が投入される(東京都)

臨時国会で見えた安倍・菅政治の終わりの始まり

2021年が終わろうとしている。この1年の政治を振り返る時、私たちはどうしても、10月31日の衆院選の結果に目を奪われがちだ。「自民党は安泰、立憲民主党は惨敗、日本維新の会が大躍進」という、あれである。そして、いったん作られたこのフレームに合わせてあらゆる論考が用意され、結果としてこうした認識が増幅されていく。

筆者は12月2日の記事<本当に「旧民主党の負の遺産」を克服できたのか…立憲民主党が参院選までにやるべきこと>において、こうした認識に若干の異を唱えた。立憲民主党の獲得議席や比例代表の得票数が、野党第1党の獲得議席としては民主党が下野した2012年以降で最も多かったこと。立憲民主党と野党第2党(今回は日本維新の会)の議席差が最も大きくなったこと。

これらを踏まえて、民主党下野以来長く続いた「野党多弱」の状態にようやく変化が生まれ「立憲民主党が頭一つ抜け出し、野党の中核として定着し始めた」との見方を示したのだ。先の衆院選の結果について「公示前議席からの増減」だけに着目していると、状況を見誤る可能性があるのではないか、ということは、再度指摘しておきたい。

さて、その選挙結果を受けて、岸田政権として初の本格的な論戦といってもよい臨時国会が、12月6日から21日までの日程で開かれた。わずか16日間ではあったが、筆者はこの臨時国会にこそ、今年の政治の「総括」がはっきり表れたと感じた。

端的に言えば「10年近く続いた安倍・菅(義偉)政治の終わりの始まり」である。そして、こういう状況を作り上げた最も大きな存在は、誰もが今「惨敗」と口を極めて罵っている、立憲民主党をはじめとする共闘野党だった、ということだ。