「人真似」が自分らしさを失わせる

「人真似」をしてもだめだということ。当たり前と思うかもしれませんが、実は、意外と難しいことなのです。あなたも、人の顔色を見て、本当の気持ちや考えを心のどこかに隠してしまうことはありませんか?

ここでぼくが「人真似」と言っているのは、心の中では実は思ってもいないのに、周囲の空気やそのときの流れについ迎合してしまうことまで含めています。

人に嫌われたくない一心で、つい「人真似」をしてしまうことがクセのようになっていってしまうと、大事な決断をしなくてはいけないときにも、そこから逃げるような心の傾向が染みついてしまいます。

「人真似」は一見、楽です。

しかし、だからこそ、つい流されて、場の空気を壊さないように、波風を立てないように……、ほんの少しのことでもそんなことを繰り返していくうちに、大事な「自分」を失ってしまうのです。

それは子どもも大人も関係なく、どこの社会にもある集団心理かもしれません。

たとえば、多くの参加者がいる場で、あることについて賛成か反対か、意見を求められたときを想像してみてください。

最初の発言者から賛成という意見が続いて自分のところに回ってきた時、あなたは反対と言えますか? 賛成多数という空気、流れができている時に、それでもやっぱり、自分は反対だと確かに思っているのなら、心に正直に気持ちを口にすることができるでしょうか?

賛成と次々に口にした人たちからは、あなたは、少し変わった人だとか、面倒くさい人だとか、思われることもあるかもしれません。場の空気を壊したくない、そんな気持ちから、つい賛成と言ってしまいたくなりますね。

駅の壁に寄りかかっている若い女性
写真=iStock.com/monzenmachi
※写真はイメージです

他人の言葉に流され、自分をごまかしてはいけない

しかし、そこが大事な分かれ目なのです。

多くの人と一緒にいるほうが楽だという気持ちに流されてしまううちに、あるいは、多くの人々に褒められたい、評価されたいと思っているうちに、つい周りに合わせてしまうとしたら。

それは、実は本当に危険なことなのです。

要領よく「長い物には巻かれて」おいたほうが楽だと頭をかすめる思いが、本当に小さな場面でも、積み重なるうちに、少しずつ、また少しずつ自分をごまかし、空しさを抱えるようになり、最終的には、自分自身に対する自信を失う結果へとつながっていってしまうのです。