定年後の人間関係をうまく作れない人には共通点がある。営業コンサルタントの大塚寿さんは「はやくに出世競争から降りた人は定年後が充実していることが多い。一方、出世レースに最後まで残った人は、会社員時代の意識が捨て切れず、定年後の人間関係でつまづきやすい」という——。

※本稿は、大塚寿『50歳からは、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

ベンチに座っている人
写真=iStock.com/Jelena83
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勝ち負けにこだわる生活はストレスフル

出世レースは、すでに40代で決着がついてしまっているものです。もし、自分がそのレールに乗っていないとしたら……40代の頃はそれを気に病んだかもしれませんが、50代になったら、むしろ幸いだと思うべきです。

というのも私の経験上、50代あるいはそれ以前で「出世競争から降りた人」のほうが、最後まで出世レースに参加した人よりも明らかに楽しい定年後を送っているからです。

常に勝ち負けにこだわり、ライバルと張り合い、数字に一喜一憂する生活は、おそらく、人間にさまざまなストレスを与えるのでしょう。それが突発性難聴、パニック障害といった病気として現れた知人は何人もいます。原因不明の病気として知られるメニエール病になった人も、片手では足りないくらい知っています。

「病気」がむしろ幸いすることも

ただ、自分自身でそうした生活の問題に気づくことができるのはむしろまれかもしれません。多いのはやはり「病気」によって身体が悲鳴を上げたケースです。

大手システム会社に勤めるNさんは、メニエール病と腎臓結石を患い、駅で倒れて救急車で搬送されたことすらあるほどのストレスを抱えていたそうです。しかし、そんな中で面談した産業医から「何をそんなに怖がっているの?」と問われ、はっとしたそうです。

「考えてみれば、退院後は無事、職場にも復帰できていたし、なんとなれば自分が働けなくなっても奥さんも働いているので、その収入でなんとかなる。必要以上に不安がることはない」……そう気づいたことで、気持ちが一気に楽になったそうです。

今はシニアスペシャリストとして、後進の育成や指導に励む毎日を送っています。